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最終更新日:2025年4月21日

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西洋古典学特殊講義III

 講義題目:批判と論争の中の古代ギリシア・ローマ医学  Lecture Title: Historical and Cultural Approaches to the Origin and Development of Ancient Greek and Ro-man Medicine with a Focus on Criticisms from Outside of Physicians as well as Debates about their Theories and Methodologies. etc.
 プラトン(427-347 BC)やアリストテレス(384-322 BC)の諸論考では、医学が高度な理論と方法論を擁する専門技術(テクネー)として成立していることは、すでに議論の前提となっています。一方で、両者によって再構成された医学のイメージによって、古代医学を理解しようとすることは、前5世紀から前4世紀において、医学が現実に置かれていた歴史的・思想文化的状況を見誤る危険性があります。
 医学というものは、誕生当初から、医学の存在そのものを疑問視するといった人々や、疾病の診断治療等において、疾病の原因を超自然的な存在(神々や神霊など)に帰すといった非科学的な原因論の立場に立つ人々、人間の自然本性(ピュシス)めぐって、医学者たちとは異なる探究の立場に立つ同時代の自然哲学者たち等々からの批判や、これらの人々との論争や対決をとおして、自覚的に確立されていったものなのです。
 本講義では、西洋医学史において「医学の父」と評されてきたヒッポクラテス(c.460‐c.375 BC)の名のもとに、今日に伝わるヒッポクラテス医学文書に収められた医学書の中から、医学者たちの上述の問題関心を端的に伝えている複数の医学テクストを取り上げ、それらのテクストを受講者の皆さんと精読することをとおして、医学の誕生と展開の一端を明らかすることに主眼を置いています。
 本講義を受講された学生諸君全員が、古代ギリシア・ローマ医学に関して、当時の医学テクストの十分な内容理解に裏付けられた専門的知見を得た上で、専門外の人々に対しても、古代医学全般に関する説明をすることができるようになることが、本講義の最終目標です。
 
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04253943
FLE-HU4W01L1
西洋古典学特殊講義III
今井 正浩
S2
集中
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
 授業全体の展開については、以下の通りです。  第1回 導入:近現代の古代医学研究史の概観  第2回 専門技術としての医学の存在根拠を問う:『技術について』  第3回 原因概念としての「自然」(ピュシス):『神聖病について』『空気、水、場所について』  第4回 「狂気」の原因への医学的アプローチ:『神聖病について』  第5回 「何ものも自然なしには生じない」:『空気、水、場所について』  第6回 人間の探究:ヒッポクラテスの医学と同時代の自然哲学  第7回 医学と哲学との間の領域化の試み:『人間の自然本性について』  第8回 医学者の反哲学的人間観:『伝統医学について』  第9回 批判ないし論争史という観点に立った古代医学への接近  第10回 ギリシア科学の成立において批判や論争が果たした役割をめぐって  第11回 経験科学の一部門としての医学における不確実の認識:『箴言』『エピデミアイ(流行病)』  第12回 継承と発展:古典期からヘレニズム期をへて、ローマ期にいたる医学の展開  第13回 まとめ
授業の方法
 基本的に、講義形式で授業を進める予定ですが、本講義のテーマに関係する古代医学や同時代の哲学思想関係の古典ギリシア語・ラテン語のテクストの精読など、演習形式の授業形態を含みます。
成績評価方法
 授業への積極的な参加度等に加えて、期日までに提出していただいた課題レポートの評点をもって、総合的に評価します。
教科書
 教科書は使用しません。  講義で使用する古典ギリシア語・ラテン語の原典等も含めて、担当教員のほうで用意した資料を配布する予定です。
参考書
 金森修[編著]『科学思想史』(2010年、勁草書房刊)「第8章 ギリシア医学における批判と論争」   (同書433~501頁)  受講予定者は、当該頁をコピーするなどして、じっくりと目を通しておいて下さい。  その他、有用な図書・文献等については、授業中に随時、紹介していきます。
履修上の注意
 本講義の受講にあたっては、古典ギリシア語・ラテン語の基礎文法修得レベルの語学の知識があることが望ましいです。  比較的入手しやすい古典ギリシア語・ラテン語の基礎文法書を以下に紹介しておきますので、まだ未習得の方は、ぜひ挑戦してみて下さい。  (1)水谷智洋著『古典ギリシア語初歩』(1990年、岩波書店刊)  (2)田中利光著『ラテン語初歩/改訂版』(2002年、岩波書店刊)
その他
 授業計画に挙げられている医学テクストについては、日本語の翻訳等でもよいので、事前に目を通して おいていただけたら、理解が一層、深まると思います。  日本語の翻訳については、以下の図書文献を参考にしてください。  (1)小川政恭訳『ヒポクラテス 古い医術について 他八篇』(1963年、岩波文庫)  (2)大槻真一郎他訳『ヒポクラテス全集』全3巻(1985~1988年、エンタプライズ社刊)  古代ギリシア・ローマ医学に関する授業の受講は初めてという方、古代医学と同時代の哲学思想等との関係に関心のある方、当時の医学テクストを原典で読んでみたいという方も含めて、多様な興味・関心を有する学生諸君の受講を心よりお待ちしています。