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最終更新日:2025年4月1日

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原典講読III

風景と環境美学
この講義では、環境美学の重要な論文をセレクトし、精読します。この分野は1970年代前後に誕生した現代の美学の一分野です。芸術と自然の美的鑑賞はどのように異なるのか、自然環境を適切に美的に鑑賞するとはどのようなことなのか、あるいは自然以外の都市や農風景を美的に鑑賞することはできるだろうかーーこれらはごく一部ですが、さまざまな環境における美的なものについて議論するのが環境美学という分野です。
環境美学という分野がこれらの問題を考える際に「環境(environment)」という語を冠するのには、思想的な背景があります。従来の美学において、自然等の問題は「風景(landscape)」という概念との関係で捉えられることは一般的でした。これに対して初期から活躍する環境美学者の一部、とりわけアレン・カールソンは、次のように考えましたーー風景が主体と客体とが分たれており、一定の距離をとったうえで主体が風景=客体を見つめる関係にあるとするということを前提しているように思われるのに対し、環境はむしろ主体を取り巻いていて、主体がその内側にあるものとして想定される、と。そのため、特に初期の環境美学においては、芸術鑑賞と自然鑑賞の違いを強調する意図からも、風景ではなく環境という語を用いることが意図的に選択されました。その際、「ピクチャレスク」すなわち「絵のような自然」を評価するための美的範疇が、環境美学においては批判対象ともなりました。

しかし、風景という概念はそのように狭量なものなのでしょうか。この原典講読の授業において再考したいのは、風景という概念と環境という概念の関係、あるいは両概念それぞれのポテンシャルです。まずは初期環境美学における風景やピクチャレスクに(明示的、あるいは潜在的に)批判的なまなざしを向ける論文を読んだあと、今度はそれとは異なり両概念の意義を再評価する論文を読みます。複数の立場を検討することで、風景や環境といったごく日常的にさえ用いられる語彙について美学的に考えることが、この授業の目標です。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04250623
FLE-HU4F06S1
原典講読III
青田 麻未
S1 S2
火曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
第1回 イントロダクション 第2回 Ronald Hepburn, "Contemporary Aesthetics and the Neglect of Natural Beauty" (1966)① 第3回 Ronald Hepburn, "Contemporary Aesthetics and the Neglect of Natural Beauty" (1966)② 第4回 Ronald Hepburn, "Contemporary Aesthetics and the Neglect of Natural Beauty" (1966)③ 第5回 Allen Carlson, "Appreciation and the Natural Environment" (1979)① 第6回 Allen Carlson, "Appreciation and the Natural Environment" (1979)② 第7回 Allen Carlson, "Appreciation and the Natural Environment" (1979)③ 第8回 Arnold Berleant, Living in the Landscape: Toward an Aesthetics of Environment(1997)より抜粋① 第9回 Arnold Berleant, Living in the Landscape: Toward an Aesthetics of Environment(1997)より抜粋② 第10回 Emily Brady, Isis Brook and Jonathan Prior, Between Nature and Culture(2018)より抜粋① 第11回 Emily Brady, Isis Brook and Jonathan Prior, Between Nature and Culture(2018)より抜粋② 第12回 予備 第13回 全体討論 ※ただし扱う文献は受講生の関心等の理由で一部変更する可能性がある。
授業の方法
発表者がレジュメを作ってきて、それにもとづいてディスカッションを行う。最終回の全体討論のまえに、この講義を通じて考えたことについて、全員にミニレポートを書いてもらう。
成績評価方法
平常点(レジュメ、ミニレポート)。受講者が多く、全員がレジュメを担当できない場合は期末レポートを課す。
教科書
必要な文献は教員がUTOLにて配布するので、受講者が準備する必要はない。
参考書
以下には、日本語での参考文献を記す。そのほかは授業中に指示する。 西村清和『プラスチックの木でなにが悪いのか 環境美学入門』(勁草書房、2011年) パオロ・ダンジェロ(鯖江秀樹訳)『風景の哲学ーー芸術・環境・共同体』(水声社、2020年) 今村隆男『ピクチャレスクとイギリス近代』(音羽書房鶴見書店、2021年) 青田麻未『環境を批評する 英米系環境美学の展開』(春風社、2020年) 井奥陽子『近代美学入門』(ちくま新書、2023年)
履修上の注意
・授業では積極的な発言を求める。 ・初回授業時に担当範囲を割り当てる。履修希望者のうち初回授業に参加できない場合はメールすること。 ・担当者以外も予習を必ず行なってくること。授業前に、予習時の疑問点をGoogleフォームなど何らかの手段で収集し、これにもとづいて指名をし、発言を求める場合もある。 ・5回以上欠席した場合は、履修の意思がなくなったものとみなす。