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最終更新日:2024年4月22日

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芸術学概論

芸術と美の乖離
 芸術学における最も基礎的な問題「芸術の定義」を論じる。「美学」と「芸術学」を結びつける伝統的な諸説を簡単に紹介した後、「美的」という概念を「芸術の定義」から排除する諸説を詳しく論ずる。既成の諸理論に、若干の新しい考えを織り交ぜながら、可能なかぎり多くの芸術定義を紹介し、倫理学、認識論、心の哲学(現象的意識の哲学)など、多くの分野と芸術論との関係を確認する。そのうえで、全学問分野の中に芸術哲学を位置づけ、その位置づけに最も適合した芸術定義はどれであるかを演繹的に論証する。都市や戦争といった〈芸術ではないが美的に見られることの多い広義の人工物〉の芸術視の効用と帰結へと考察を進める。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04240611
FLE-HU4F02L1
芸術学概論
三浦 俊彦
S1 S2
月曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
 芸術学の最も難しい現代的課題は、「芸術」と「美的なるもの」との関係を見直すことである。この二つの概念は、互いに交わりながら、「美的でない芸術」「芸術以外の美」の存在を許容する。「美的でない」の意味は多様だが、「知覚的でない」「実用的である」という要因を重視し、この二つに該当する芸術としてそれぞれ「コンセプチュアルアート」「ソーシャリーエンゲージドアート」を意識しつつ、主として分析哲学における洞察と方法に依拠して、芸術と非芸術の区別の規準を考える。  現在提唱されている「芸術の定義」は、主なものに絞っても軽く百種類を超える。それらを歴史的順序でなく論理関係の順に配列して、「学問の体系化」の典型例を提示する。一見して偏執的な分類図式が展開されることになるが、それによって、学問研究が芸術制作と似た物語行為に根差している事実(あるいは可能性)を確認しよう。  以上の諸課題を念頭に、芸術概念の定義がいかなる意味で重要であり、文化的価値全般の中に芸術を位置づけなおす。 第1回 「芸術の定義」という問題圏 概念を定義するとはどういうことか 第2回 「美」による芸術の定義その①・・・「美的」という【概念の意味の】拡張可能性          美的創造理論、虚構的美的性質理論など 第3回 「美」による芸術の定義その②・・・「美的」を帰属させる【方法の】再解釈          観念論的定義、高階戦略、ディスコミュニケーション説など 第4回 「美」によらない芸術の定義その①・・・手続き的本質主義の諸説          制度主義的定義、歴史主義的定義、様式理論など 第5回 「美」によらない芸術の定義その②・・・反本質主義の諸説          選言的定義、自然主義的定義など 第6回 芸術の「定義」を疑問視する諸説その①・・・芸術の実在論          クラスター説明、プロトタイプ説など 第7回 芸術の「定義」を疑問視する諸説その②・・・芸術の非実在論          責任転嫁理論、単称主義、錯誤理論など 第8回 芸術の「定義」を疑問視する諸説その③・・・非認知主義の諸説          規約主義、特定定義、社会彫刻論、〈開かれた概念〉説など 第9回 芸術の「定義」を疑問視する諸説その④・・・実在論への回帰          反理論、〈脱定義〉によるメタ定義、制度機能説など 第10回 芸術の「定義」へ回帰する諸説その①・・・美的概念への回帰          美的コミュニケーション説、汎機能主義など 第11回 芸術の「定義」へ回帰する諸説その②・・・          実験哲学的美学、意図主義的機能主義、命題態度説など 第12回 諸説の概観、前途瞥見          文化実践としての「芸術」を再考する 以上は大まかな流れの粗描であり、うち二回ほどを、学説の例示に役立つ視聴覚資料の映示などに費やす可能性がある。
授業の方法
毎回のリアクションペーパーや、時事的な話題に基づいて、内容を微修正することがある。
成績評価方法
主に期末レポートと提出物で評価し、出席状況を加味する。期末レポートのテーマは、講義の理論的内容を原則とするが、当方で指示する芸術系イベント等の参加報告に代えるという選択肢も用意する。
教科書
なし
参考書
講義の中で、適宜指示する。
履修上の注意
特になし