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死生学特殊講義Ⅱ

認識をめぐる不正義と責任――現代認識論の一展開
 2010年代以降、英語圏の認識論で盛んに論じられるようになった「認識をめぐる不正義」(epistemic injustice)の問題と、その不正義を是正する「認識をめぐる責任」(epistemic responsibility)の問題を考察する。そのことを通じて、「認知する」や「認識する」といった営みに否応なく孕まれている倫理的な次元を、その社会的な含意も踏まえつつ、明らかにする。
 哲学の分野においては、認識論と倫理学は別々の領域に属するものとしばしば――「常に」ではないが――見なされてきた。しかしながら、私たちの具体的な生活の場面を考えてみると、多くの場合、倫理の問題は同時に認識の問題でもある。例えば、疾病・障がい・人種・国籍・性別・性的指向等による差別においては、認識自体が、力関係によって媒介され、相対的に弱い立場に置かれた者は発言権を奪われ、沈黙を余儀なくされることがある。また勇気をもって窮状を訴えたとしても、それは正当な証言としては見なされず軽視されるかもしれない(「証言をめぐる不正義」)。さらに言えば、そもそも、当事者の苦境にたいして、周囲の人々の関心が低いため、その苦境を表現する言葉が開発されず、その結果、本人はその苦境を訴える言葉自体を奪われているかもしれない(「解釈をめぐる不正義」)。
本講義では、まず主にフェミニスト認識論(ないし社会的認識論)による「認識をめぐる不正義」論の基本的な発想・概念を概観・検討する。その際、臨床の文脈において、その基本的発想・概念が、どう発展的に捉えられるのかにも触れたい。そのうえで、.そういった不正義に対して私たちはどのような責任を負っているのかも批判的に考察する。そこでは同時に、潜在的偏見(implicit bias)・故意による無知(willful ignorance)・責められるべき無知(culpable ignorance)に対して、私たちはどのような点で責任を負いうるのかも検討することになる。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04200042
FLE-HU4202L1
死生学特殊講義Ⅱ
早川 正祐
S1 S2
木曜3限
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教室
法文1号館 312教室
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
1.社会的不正義 [Iris Marion Young] 2.フェミニスト認識論――聞くことを中心に据えた認識論 [Lorraine Code] 3.徳認識論と認識をめぐる責任 [Lorraine Code, Heather Battaly] 4.認識をめぐる不正義①――証言をめぐる不正義 [Miranda Fricker, Jose Medina] 5.認識をめぐる不正義②――解釈をめぐる不正義 [Miranda Fricker, Jose Medina] 6.聞くという次元での責任 [Miranda Fricker, Jose Medina] 7.医療における認識をめぐる不正義
授業の方法
基本的には講義形式で行うが、必要に応じてディスカッションを行う。
成績評価方法
授業への参加度(簡単なリアクションペーパー等を含む)と期末レポート
教科書
特になし。プリントを配布する。
参考書
・Lorraine Code, Rhetorical Spaces: Essays on Gendered Locations (1995) ・Heather Battaly, Virtue (2015) ・Miranda Fricker, Epistemic Injustice: Power and the Ethics of Knowing (2007) ・Jose Medina, The Epistemology of Resistance: Gender and Racial Oppression, and Resistant Imaginations (2013) ・Iris Marion Young, Responsibility for Justice (2011)(アイリス・マリオン・ヤング『正義への責任』) ・Michael Brownstein & Jennifer Soul, Implicit Bias and Philosophy (2016)
履修上の注意
特になし