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最終更新日:2023年3月15日
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宗教学宗教史学特殊講義
せめぎあう人と人外―〈負債〉の東アジア環境文化史―
自然環境は、他者に満ちている。人間は、彼らさまざまなノンヒューマン―草木から鳥獣、昆虫や細菌、あるいは日・月・星といった天体、雨や風、雲などの森羅万象、それらを象徴する神霊に至るまで―と交感・交流し(しようとし)、多様な文化を築いてきた。しかしその関係は必ずしも平和的なものに終始するとは限らず、対立や軋轢を抱え、時には相手を殲滅・破壊するような事態に至ることもあった。決して過度の悪意や放縦な欲望のためだけではなく、ただ自らの生命を繋ぐために、人間は自然を圧迫し、消耗させてゆかざるをえなかったのである。結果人間の心性のなかには、自然からの搾取・環境の破壊に対する負債感と、逆にそれを正当化するベクトルが共存するようになっていった。
地球温暖化や資源の枯渇など環境問題が深刻化し、当該地質年代をアンスロポセン(人新世)と呼ぶ提案もなされる今、持続的な社会・経済を構築するために、自然と人間が取り結ぶべき〈公正な〉関係とは何かが問われている。本講義では、私たちの住む東アジアを主なフィールドにしつつ、人類文化に内在する負債感/正当化のベクトルを長大な歴史のなかに捉えなおし、他者としての自然といかに〈共生〉してゆくか(そしてそもそも〈共生〉とはいかなる状態を意味するのか)、その課題と可能性について考えてゆきたい。
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