学部後期課程
HOME 学部後期課程 特別講義 データサイエンスII(課題の発見と解決)
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2026年4月1日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

特別講義 データサイエンスII(課題の発見と解決)

この世界は,あなたが想うより少し複雑で,データが語るよりずっと奥深い。

私たちの社会には,かつてないほど多くのデータが溢れています。検索すれば即座に答えが見つかり,おすすめ欄は欲しいものを先回りし,あなたの発した意見は数万人からの共感を得る------。まるで,世界がすべて可視化されたかのような感覚を覚えます。しかし,手元のデバイスに映るそのデータは,本当に世界のすべてを「ありのまま」に映し出しているのでしょうか?見えているデータだけを過信し,その背後にある「見えない構造」への想像力を手放したとき,私たちは思わぬ落とし穴に足をとられることになります。

しかし,私たちはこの不完全なデータを頼りに,紛争,貧困,ジェンダー不平等といった現実の複雑な課題に立ち向かわなければなりません。あるいは,組織戦略,マーケティング,商品開発といったビジネス上の重要な意思決定を行わなければなりません。では,どうすれば一部のデータから,社会やビジネスの課題の全体像を正しく捉え,より良い解決策を導き出せるのでしょうか?

そのための統一的かつ汎用的な推論の枠組みが,統計学およびデータサイエンスです。本授業では,現実世界における課題発見とその解決のために,既存の知識と新たなデータから論理的に結論を導く方法として,統計学およびデータサイエンスを学習します。


この授業の目標は,現実世界の課題発見と解決策の評価を,データに基づいて実践するためのリサーチデザインを習得することです。さらに,その分析プロセスと結果を,不確実な状況下での意思決定における「共通言語」として活用する力を養います。具体的には,以下の2つの能力の獲得を目指します。

1. リサーチデザインの習得
現実の社会的課題を,データ分析可能な形に落とし込み,論理的な結論を導くためには,以下の3つのステップを一貫させる必要があります。この授業では,これらを統合的にデザインする力を身につけます。
  問いのデザイン:抽象的な課題を,データで検証可能な具体的な問いへと翻訳する。
  データ収集デザイン:問いに答えるために必要なデータを特定し,適切な調査対象や比較対象,データ収集の方法を含めた収集プロセスを設計する。
  分析デザイン:収集したデータに対し,目的に応じた適切な統計手法を決定し,課題の発見や解決策の効果検証を行うための分析枠組みを決定する。

2. 共通言語としてのデータサイエンスの実践
分析結果を他者との合意形成を図るための根拠として使う力を養います。解釈の前提とその限界(何が言えて,何が言えないか)を理解し,それを他者に提示して説得するスキルを身につけます。
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
0126979
特別講義 データサイエンスII(課題の発見と解決)
勝又 裕斗
A1 A2
金曜3限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
法学部
授業計画
第一回  不確実な世界と,その「影」としてのデータ:共通言語としてのデータサイエンス 第二回  差別や偏見のない世界を実現する:無作為化実験による課題解決策の有効性評価 第三回  誤情報・偽情報に惑わされやすいのは誰か:社会調査による課題の発見と現状理解 第四回  なぜ私たちはデータから世界の構造を読み解けるのか1:確率変数による偶然性の表現 第五回  なぜ私たちはデータから世界の構造を読み解けるのか2:推定量の標本分布による仮想的な繰返し調査・実験の表現 第六回  なぜ私たちはデータから世界の構造を読み解けるのか3:より現実的なケースや関心対象への応用 第七回  リサーチデザイン 第八回  統計モデルで効果検証に迫る1:研究例の追体験 第九回  統計モデルで効果検証に迫る2:理論 第十回  単回帰分析,重回帰分析1 第十一回 重回帰分析2 第十二回 未来の効果検証をデザインする 第十三回 (大学院のみ)重回帰分析3:行列,内積,射影 なお,内容と順序を変更する可能性があります。下記「関連ホームページ」にある詳細版シラバスに最新版の詳細を記載するので参照してください。
授業の方法
この授業は,講義形式で行います。 この授業には,学習を支えるための4つの特徴があります。 1. 実践的な課題解決プロセスの追体験 「この数式は何に使うのか?」という疑問を抱えたまま抽象的な統計理論を学ぶことはありません。この授業では,現実の社会的課題を題材に,リサーチデザインから分析結果の解釈までを追体験することで,データサイエンスが何にどのように役立つのかを理解してから学習を始めます。 2. 必要なときに,必要な数学を,必要なだけ データサイエンスに数学は不可欠ですが,「数学が苦手だから」と諦める必要はありません。まずは直観的にアイディア(概念)を理解し,必要な数学を,必要だと実感したタイミングで,ステップバイステップで導入します。「何にどう使うか」を明確にした上で理論を学ぶため,効果的に学習を進められます。 3. 挑戦へのサポート データサイエンスによる社会的課題の発見と解決という新しいスキルの習得は,誰にとっても難しい挑戦です。すぐにすべてを理解できなくても構いませんし,最初から完璧なリサーチデザインを設計することができなくても大丈夫です。そもそも,現実の課題解決に,唯一絶対の正解はありません。私たちが解決しなければならない課題も,そのために解かなければならない問いも,そしてそれを阻む障害も無数にあり,それを解くためのデータや方法も無数に考えられます。その中で,何をどういう根拠に基づいて選ぶのか,それを決めるのがあなたの役割であり,この授業を通じて培ってほしい能力です。この授業では,失敗を恐れずに試行錯誤し,自身の思考の解像度を少しずつ高めていくプロセスを重視します。この試行錯誤は,私たち研究者が過去数百年間にわたって日々続けている営みそのものです。前提知識の多寡や専門分野の枠を超え,この目標を共有するすべての学生の果敢な挑戦を歓迎し,サポートします。 4. ともに探究する学習コミュニティの形成 このような試行錯誤を伴う挑戦は,一人では挫折しやすい困難な道のりです。しかし,この授業では個人の試行錯誤を,クラス全体の学びを深めるための重要な「貢献」と捉えます。授業内で共有される質疑応答や,自分とは異なる視点からの気づきに触れることは,自分の思考を相対化し,深めるための大きな助けになります。誰かの小さな疑問が他の誰かの大きな発見につながり,教室全体の理解が深まっていく。この授業では,そのような学習環境の構築を目指します。
成績評価方法
小テスト,提出課題,および,平常点による
履修上の注意
[履修要件と前提知識] 数学や統計学の予備知識は問いません。また,法学部および法学政治学研究科科目の「データサイエンスI(入門)」の履修は,本授業の履修のための要件ではありません。関心があれば気軽に参加してください。なお,この授業では,プログラミングは扱わないので,その知識も必要としません。 [関連科目] この授業は,法学部・法学政治学研究科における「データサイエンスIII(因果推論)」および「データサイエンスIV(統計的モデリング)」の基礎であり,これらの授業はこの授業の内容を理解していることを前提として進みます。 詳しくは,下記「関連ホームページ」にある「東京大学法学部における統計分析・データサイエンス関連科目群について」および「東京大学大学院法学政治学研究科における統計分析・データサイエンス関連科目群について」を参照してください。 [PC等の持ち込みの推奨] この授業では,Slidoを利用して授業中に質問や感想を受け付け,それに回答することによってインタラクティブな授業を行います。そのために,PC等のデバイスを授業に持ち込むことを推奨します。これらの説明を行いますので,初回講義には必ず出席してください。 [資料配布,授業時間以外の質疑応答] 資料の配布,および,授業時間外における授業や課題についての質疑応答にはUTOLを利用する予定です。UTOL上での質問は他の人の理解にも資するので,積極的に行ってください。また,受講者同士で相互に質問に回答することも推奨します。