学部後期課程
HOME 学部後期課程 刑事訴訟法演習(外国語科目)
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2026年10月16日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

刑事訴訟法演習(外国語科目)

司法取引の研究
 司法取引とは、捜査・訴追・公判を含む刑事事件の処理への被疑者・被告人による協力と、それに対する検察官からの一定の利益の提供ないし有利な取扱いについて、両者の間で協議や交渉が行われ、それに基づいて一定の合意がなされることを指す。司法取引は、大きく自己負罪型と捜査・公判協力型に分けられる。前者は、被疑者・被告人が自らの犯罪事実を認めることと引き換えに、検察官が一定の利益を供与することを合意するものであるのに対し、後者は、被疑者・被告人が、共犯者等の他人の犯罪事実の捜査や公判審理に協力することと引き換えに、検察官が一定の利益を供与することを合意するものである。
 平成28年(2016年)の刑訴法改正により、我が国の刑事司法に捜査・公判協力型の司法取引が導入され(刑訴法350条の2以下に規定されている「協議・合意制度」)、適用事例も既に複数存在しているが、自己負罪型の司法取引は未だに導入されていない。
 もっとも、2025年7月に公表された「『改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会』取りまとめ報告書」(法務省HPにて閲覧可能)において、自己負罪型の司法取引について、「取調べへの過度の依存を改めるという平成28年改正法の趣旨や、黙秘・否認事案の増加やそれに伴う捜査・公判における負担増大の傾向が今後ますます進むと考えられることなどに照らし、いずれ本格的な検討を迫られる時期が来ると考えられるため、捜査・公判協力型の合意制度の運用状況を注視しつつ、基礎的な調査・検討を始めていく必要がある。」と明記され、2025年12月に法務省が新たに設置した「これからの刑事手続に関する研究会」において、具体的な検討が行われる予定となっている。
 このような議論状況を踏まえ、我が国の刑事司法制度に適合的な自己負罪型の司法取引のあり方を検討するにあたっては、刑事手続の運用において自己負罪型の司法取引が重要な役割を果たし、それに関する膨大な議論を蓄積しているアメリカ法を参照することが有益であろう。
 そこで、本演習では、我が国における従前の議論の経緯(捜査・公判協力型の司法取引のみが導入された理由やその運用状況等)を確認した上で、アメリカの司法取引を紹介する邦語文献やアメリカ刑事訴訟法の教科書・体系書を精読することにより、アメリカにおける自己負罪型の司法取引について理解を深める。その上で、日米の刑事司法制度の違いを踏まえつつ、我が国に適合的な自己負罪型の司法取引制度を構想してみたい。
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
0126111S-11
FLA-SE4302S1
刑事訴訟法演習(外国語科目)
成瀬 剛
A1 A2
木曜2限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
法学部
授業計画
Ⅰ 第1回 ガイダンス  担当教員が日本の協議・合意制度及びアメリカの刑事手続・司法取引の概要について説明するとともに、報告の割り当てを決める。   Ⅱ 第2回 我が国における議論の経緯を把握する  平成28年刑訴法改正の要綱案を作成した「法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会」の議事録、協議・合意制度に関する解説書、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の議事録などを全員で検討することにより、我が国における司法取引に関する従前の議論の経緯を把握する。 Ⅲ 第3回~第6回 宇川春彦「司法取引を考える(1)~(17)」を読む  宇川春彦検事によるアメリカの司法取引の浩瀚な紹介論文(1996年から1998年にかけて判例時報誌に全17回にわたって連載されたもの)を輪読することにより、アメリカの司法取引に関する基礎知識を身に付ける。  なお、同検事が上記の論文内容を要約して、若干のアップデートを行ったものとして、「米国における司法取引」刑法雑誌50巻3号357頁(2011年)もあるので(ネットで入手可能)、こちらも適宜参照する。 Ⅳ 第7回~第11回 アメリカ刑事訴訟法の教科書・体系書を読む  アメリカ刑事訴訟法の代表的な教科書であるJoshua Dressler et al., Understanding Criminal Procedure: Volume 2 Adjudication (5th ed. 2024)、及び、代表的な体系書であるWayne LaFave et al., Criminal Procedure (7th ed. 2025)のうち、司法取引に関する章を精読し、アメリカにおける最新の議論状況を把握する。 Ⅴ 第12回~第13回 我が国に適合的な自己負罪型の司法取引制度を構想する  アメリカ法の知見を活かしつつ、日米の刑事司法制度の違いも踏まえて、我が国に適合的な自己負罪型の司法取引制度を構想する。
授業の方法
 報告スタイルは、グループ報告を予定している。  各グループに、宇川論文の報告1回、アメリカの教科書・体系書の報告1回、日本に導入すべき制度案の報告1回(計3回の報告)を行ってもらう。  宇川論文の報告では、同論文に記載されている内容を分かりやすく要約して説明してもらい、全員で議論して理解を深める。  アメリカの教科書・体系書の報告では、アメリカ刑事訴訟法の教科書と体系書に記載されている内容を予備知識がない他の学生にも分かるように説明し、質疑応答を通じて理解を深める。本学の卒業生はアメリカに留学する者も多いので、そのイメージを掴む機会にもなろう。  制度案の報告では、日米の刑事司法制度の違いに留意しつつ、自己負罪型の司法取引制度案を自由に構想してもらう。その上で、各制度案の長所・短所を比較しながら、我が国に適合的な制度構想を全員で策定する。
成績評価方法
筆記試験は行わない。 レポートを課さない。 平常点のみにより、優上、優、良、可、不可の形式で評価を行う。
履修上の注意
アメリカの刑事手続・司法取引に関する前提知識は一切必要としない。 外国法を理解するために必要な能力は、英語力よりも法律家としての理解・分析力であるので、これまで英語法律文献に全く接したことがない者についても積極的な参加を期待したい。