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最終更新日:2024年4月1日
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造形第五
「いま、「東京論」は可能か」
ここ数年、東京を題材とした都市論(「東京論」)がにわかに盛り上がりをみせているように思われる。その契機のひとつは間違いなく2013年9月に決定し、つい先日、1年の延期をへて開催された東京2020五輪・パラリンピックである。
かねてから東京は都市論の中心的な舞台でありつづけてきた。振り返ってみると、東京をめぐる都市論の隆盛は、1960年代、1980年代、2000年代にピークを見出すことができそうである。近年の動向をもふくめれば、図らずも20年周期で繰り返されてきたことになる。これらはそれぞれ、高度経済成長、バブル経済、大規模な規制緩和の時期に重なっているようにもみえ、各時代の都市の成長(戦略)や開発(計画)とも何らかの関連を有するものであろう。少なくともこうした東京論が、当該期の都市的状況に対する応答あるいは同時代的な関心事を背景に都市・東京が論じられたものであったことは間違いない。
他方これまでの東京論が、大きな災害が比較的少なく、経済成長が目指されてきた時代に生み出されてきたことにも目を向けておきたい。これに対し、現在のわたしたちが置かれているのは災害や気候変動の問題がひしひしと実感される時代であって、都市の存在そのもの(あるいは都市化)が本質的に捉え返される時期にも来ているように思われる。こうしたある種の緊張感とは裏腹に、2020年代の東京では、渋谷に代表されるような都心部を中心にした数多くの大規模な都市再生事業の竣工ラッシュが控えている。
このような現在地から「東京論」はいかに可能か、と問うてみたいというのが本講義のねらいである。履修生は、現地調査や歴史的分析にもとづいて自分たちなりの東京論を提示することを目指す。
ただしここでいう東京論とは、なにも大上段に構えて東京のすべてを説明したり、抽象的に論ずることを企図していない。まずは具体的な場所に生じている事象や取るに足らないようにみえる都市のふるまいを実際に観察し、その固有のおもしろさを深く読み取ることに取り組んで欲しい。そのうえで、それら個別的で具体的な発見について、東京という地域における普遍性や特殊性を考えてみること、あるいは東京という都市のなかでの位置づけを考えてみることを試みてもらいたい。
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