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最終更新日:2024年3月15日

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東洋思想史

倫理思想としての儒教
中国思想は東洋思想の重要な一部分であり、日本の文化・社会にも大きな影響を与えた。この科目では倫理という問題を主軸に、中国思想史に関する入門的な講義を提供する。
歴史的に中国と呼ばれた地域の倫理思想は、儒教によって代表される。孔子が作り出し、孟子・荀子などが育てた儒教の倫理思想は、やがて歴代王朝の「国教」となり、現地の人間関係や社会秩序を二千年余りにわたって強く規定した。彼らは具体的に、どのような倫理を求めたのだろうか? 人と人の正しい繋がりを、どうすれば実践できると考えたのだろうか? そして何よりも、儒教の倫理思想は皆を幸せにしたと言えるのだろうか?
まずは、春秋時代に始まった儒教の倫理思想が、前漢・後漢でひとまずの完成に至るまで。次いで、南宋の朱熹(朱子)や明の王守仁(王陽明)による新たな展開。以上二つに重点を置き、その理論的な歩みと、それが社会にもたらした影響について理解しよう。論理が整わずに終わった部分や、負の遺産と呼ぶべき物事からも目をそらさず、中国で語られた倫理の思想を、様々な角度から冷静に見つめてほしい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
50606
CAS-GC1A51L1
東洋思想史
水口 拓寿
A1 A2
水曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
以下に挙げるトピックを順次扱う予定だが、授業進行の状況に応じて追加・変更もあり得る。 0 はじめに 0-1 倫理という熟語は中国生まれ/倫理はethicsと同じか/この科目のねらい/大きい中国と小さい中国/内中国で語られた倫理思想 1 倫理を語ったのは誰か                  1-1 天と人/宗族制と封建制/世界観の原像/西周時代から東周時代へ/思想家の誕生/孔子――最初の思想家/倫理思想の始まり 1-2 倫理と法と慣習/聖人がつくった倫理/詩・書・礼・楽/儒家と墨家・法家・道家 1-3 儒家思想の展開/「儒教の国教化」とその結果/経学というあり方   2 儒教の倫理として何が求められたか            2-1 二つの群からなる倫理/孝――宗族内部の倫理①/弟(悌)――宗族内部の倫理②/仁――社会一般の倫理①/孝・悌と仁の接続/義――社会一般の倫理②/義の存在価値/忠と信――社会一般の倫理③/知(智)――倫理を正しいと自覚できること/四徳と五常/恥の意識――倫理に背かないために 2-2 「名を正す」ということ/倫理思想の不平等な性格/人は名の多面体として生きる/忠の変質/孝と忠の新しい接続/『孝経』から『大学』へ/孝は「仁の本」か「仁を為すの本」か/朱子学と風水/朱子学から陽明学へ 3 儒教の倫理は何によって表現されたか            3-1 『論語』の言葉から/礼と楽――倫理を表現する二つの手段/「礼儀三百、威儀三千」/礼の精神性を唱えた孔子/喪に服する期間にも格差が/「克己復礼」と仁の関係/形式よりも倫理を優先した孟子/節度と秩序を重んじた荀子/『孝経』における喪礼の重視 3-2 儒教の国教化と礼学の確立/礼は時代につれて変化する/私礼というジャンルの書物/死者や祖先との付き合い方/徳治と礼治/公的な教化と私的な教化/「修己」から「治人」へ/街いっぱいの聖人たち 3-3 礼と法のコラボレーション/「礼に立ち、楽に成る」/楽もまた教化のために     4 儒教の倫理思想はなぜ正しいとされたか          4-1 倫理思想としての正当性と普遍性/楽天的に構えた孔子とその弟子/戦国時代を迎えて/性善説を唱えた孟子/性善説の根拠はどこに/『孝経』『中庸』による性善説の整備/性悪説を唱えた荀子/性悪説は人類への悲観ではない/性悪説の根拠はどこに 4-2 儒教の国教化と性三品説の台頭/孟子から韓愈へ、韓愈から朱熹へ/朱子学の性善説/本然之性と気質之性/そして陽明学の性善説へ/陽明学の性善説も経典に典拠を求めた 4-3 「儒教は正しい」が疑われなくなったとき/天とは結局何だったのか/儒教の倫理を拒む「自由」とその代償 5 儒教の倫理思想は皆の幸せをめざしたか          5-1 それは不幸の自覚から生まれた/倫理思想の理想と現実?/男尊女卑と女性の閉じ込め/民は本当に教化できるのか/夷狄というポジション/冊封から攘夷へ/頭ごなしの抑圧と疎外 5-2 「不孝」な人生設計への不寛容/禽獣と呼ばれた論敵たち/倫理の実践が過熱する危険性/儒教の倫理思想は誰の幸せをめざしたか 6 おわりに                            6-1 その後の儒教思想――考証学から新儒家まで/国家と儒教の近現代史①/国家と儒教の近現代史②/皆さんに願うこと
授業の方法
教科書と板書を用いて講義形式で行う。
成績評価方法
期末レポートを課す。自分の進もうとする専門分野や、現在関心を持っている問題と積極的に関係付けたレポートを歓迎する。
履修上の注意
中国思想・中国語・漢文に関する予備知識は不要。
実務経験と授業科目の関連性
なし。