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最終更新日:2024年3月15日
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歴史と文化
ポストコロニアリズムから「グローバリズムの政治学」へ:冷戦後のグローバルサウスをめぐる思潮
本授業では、20世紀後半の重要な思潮であるポストコロニアリズムの主要なテキストを読んだ上で、21世紀になって、なぜこの思潮が後退し、その代りに広義の政治学(グローバリズムの政治学)が興隆してきたのかを考えます。私は前者にも後者にも批判的です。前者の場合は、不可知論に陥りがちで、結局は北米やヨーロッパの英語文学研究の枠組みを越えられなかったと考えています。後者の場合、その出自は、西洋中心主義であり、この亡霊が完全に払しょくできたかというと、できていないと思います。ただ、植民地主義は、人種差別とともに、国家建設や開発主義でもあり、単純に西洋中心主義を論拠として全否定はできません。ですので、グローバリズムの政治学の最近の業績をどう評価するのかは、正直なところ、迷っているところです。他方、20世紀から21世紀の時代、つまり近代植民地から国民国家の形成を一つの時代区分で捉えることを試みています。そのためには、グローバル・ヒストリーの立場から、これらの二つの思潮を繋げて再評価してみることが必要ではなかろうか、と。このような観点から、この授業を開講することにしました。なお、日本語業績を主とする研究者は、本講義では扱いません。英語学知の批判をやってみたいと思うからです。
本授業では、フランツ・ファノン、ラナジット・グハ、ガヤトリ・スピヴァック、エドワード・サイードといった人々のポストコロニアリズムの古典を読み、その後に80年代以降に盛んに論じられたベネディクト・アンダーソン、パルタ・チャタジー、スティーブン・クラズナーといったグローバルサウスの国家建設を論じた議論を検討します。その上で、大前研一、デイヴィッド・ヘルド、ダニ・ロドリック、ウルリッヒ・ベックらのグローバリゼーションをめぐる左右の立場を確認します。最後に、ダグラス・ノース、ウィリアム・マクニール、ニーアル・ファーガソン、フランシス・フクヤマ、ダロン・アセモグル/ジェームズ・ロビンソンといった人々の、国家(制度)と政治に関する論説を検討します。この最後のものを「グローバリズムの政治学」と捉えています。第13回目では、この一連の流れを受けて、私の専門であるアメリカ植民地期フィリピンの研究の21世紀的な意義を考えてみたいと思います。
歴史は多様であり、様々な見方があります。最近話題のものは、人種やエスニシティに焦点を置くものです。これらの論点は極めて重要ですが、本授業では、国家という古典的なテーマを中心においています。「歴史と文化」というタイトルについての弁明としては、冷戦後において、ナショナルなものからグローバルなものになるに関心が移るにつれて、「文化」を研究する意義を問い直すものになります。
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