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最終更新日:2024年4月1日
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アジアでがんを生き延びる
アジアでがんを生き延びる
私たちは今までにない時代に生きている
急増するがんはアジアの今を映し出す鏡であるが、
コロナという苦難は医療と社会のありようそのものの弱さをあぶりだした
人類がやまいを抱えて生き延びるとは?
がんを通してアジアの未来をみつめる
感染症から非感染症へ疾病構造が変容する中、アジアにおけるがんは急増している。がんという病には、遺伝的素因や生活習慣など、長い時間軸の中でのひとのくらしの営みや文化が色濃く影を落としている。これまでアジアは、医療水準、医療者、患者の価値観もまちまちで、データも単純比較できず、連携が難しい地域であった。経済成長著しい一方、未だにこの地域に横たわる、歴史的負債は大きく、グローバリズムとナショナリズムの「ねじれ」が先鋭に浮かび上がる地域である。アジアのがん医療における、新規薬剤開発や安全かつ有効な治療法の開発などを目指す「総合癌研究国際戦略推進」寄附研究部門は、その活動の一つとしてがんという共有課題を乗り越えることで、この「ねじれ」を超克していくことを目指し、がんをグローバルヘルスアジェンダにすることなどの政策提言活動を行ってきている。がんは政治、経済、文化など、様々な課題と密接にかかわっている病である。それぞれの領域の第一人者に、アジアのがんに纏わる問いを投げかけ、日本がアジアとどう向き合うべきなのか、対話の回路としての語りを重ねたいと考えている。
アジアでがんを生き延びるは、2011年4月にスタートしてこの春で11年目を迎える。
夏学期と秋冬学期を通じ、アジアで急増するがんを医学のみならず、歴史、経済、文化、外交など様々な視点から捉えることで、アジアの今日的課題を考える連続講座である。これまでの総授業数、206コマ(学生発表会なども含む)を数えるが、その分野は 大きく下記の12分野に渡っている。医学研究(21コマ)患者支援(5コマ)医療政策(24コマ)医療経済(6コマ)医薬品開発(26コマ)グローバルヘルス(24コマ)歴史(5コマ)文化―心 (6コマ)文化―暮らし(16コマ)社会システム(9コマ)外交(14コマ)学際研究(30コマ)。
初回授業2011年4月8日「いのちの在り方をうつしだす鏡―アジアにおけるがん医療をめぐって」(赤座英之)から始まったこの連続講座に通底していることは、がんは単なる疾病ではなく、その病態の深刻さから社会への大きな負担となっており、ゲノムに組み込まれている生物学的な解釈にとどまることなく、社会のありようそのものを見定めなければ、この疾患と向き合うことができないという視点である。人類は感染症の克服を目指した進歩により高齢化社会を手にいれ、それと同時にこのがんという疾病と生き延びる道を選ばされた。人類史上これほどまでに多くの人びとがこの病を抱えて生き延びていたことがないなか、既存の智慧に頼る問題解決よりも、何が問題なのかという問題提起が必要となる。
本講座は、医療経済・格差こそが、問題の根幹にあるという視点に立っており、現在の「誰も取り残されない未来」を目指すユニバーサルヘルスカバレッジの議論の枠組みに貢献している。今期はこれまでの講義を踏まえ、未来にむけたCross-boundary Cancer Studiesの学としての成り立ちを見据えて、下記のテーマに沿って授業を展開する予定する。
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