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最終更新日:2024年4月1日

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社会と健康II

社会と健康II
ヘルスプロモーション施策、とりわけ社会環境要因にアプローチする方法の理論と実践法を学ぶ。「健康の社会的決定要因」と「健康格差」に特に着目し、そのメカニズムと制御方法、測定法も扱う。講義では受講者による発表や演習を積極的に取り入れる。関連する理論のうち、疾病予防におけるhigh risk strategy & population strategy、population strategyの亜型であるvulnerable population approach, proportionate universalisms, redistributive policy等を扱いつつ、健康格差是正に資するアプローチの実際を学ぶ。また、地域社会での実践に関連して、community empowerment, community organizing, social prescribing、地域包括ケア、地域共生社会 などを扱う。近年注目されるこども食堂や生活困窮世帯の子どもへの学習支援など、市民による社会包摂の取り組みとの関連やその在り方についても批判的に検討(critique)する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
41018221
GME-PH6221L2
社会と健康II
橋本 英樹
A2
金曜3限、金曜4限
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講義使用言語
日本語、英語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
医学系研究科
授業計画
<スケジュール> 1・2) 健康の社会的決定要因および健康格差対策の基本概念 11/27 3・4限 【レポート課題あり】 3・4) 連携とガバナンス 12/4 3・4限 5・6) 地域診断データ活用と合意形成理論 12/11 3・4限 7) 行動科学とソーシャル・マーケティングの応用(鎌田)12/18 3限 8) 構築環境(built environment)と健康(高木)12/18 4限 9) ヘルスコミュニケーションによる健康格差対策(石川)12/25 3限 10) 生活困窮者・マイノリティ支援(近藤)12/25 4限 11・12) 特別講義:健康影響予測評価(HIA)演習* (藤野) 1/15  3限・4限 13・14) 課題発表1/22 3・4限 【レポート課題あり】 *1月15日の特別講義は演習形式です。聴講可能ですので、希望者に呼びかけてください
授業の方法
講義・討論・レポート・課題発表 <講義内容> 1・2)  健康の社会的決定要因および健康格差対策の基本概念 概要:社会環境を改善することにより社会全体の健康を達成しようとする動きが活発になってきている。世界保健機関(WHO)の健康の社会的決定要因に関する特別委員会の声明(2008)に続き、日本でも、国民の健康推進プラン「健康日本21(第2次)」の目標に「健康格差の縮小」が加わった。本講義では、具体的にどのようにして健康格差対策を進めるかについて、豊富な事例とともに、理論的な枠組みを学ぶ。(「社会と健康I」で詳しく扱った)健康の社会的決定要因に関する知識を踏まえて講義をする。一般論として、健康格差対策にはポピュレーション・アプローチが推奨されるが、手段によっては健康格差を拡大しかねない。講義の後、コースの最後に予定している課題発表会のグループ分けを行う。 3・4) 連携とガバナンス 社会環境の改善は、保健セクターだけでは実施できない。都市計画や福祉、教育など、多様な部署との連携、および民間企業や住民組織との協力が不可欠である。しかし縦割りに業務が分類されている多くの行政機関の枠組みでは、これが困難である。本講義では、多部署連携によりいわゆる「地域づくり」型の保健政策を進めている自治体の事例を紹介しつつ、どのようにして社会環境を改善できるかについて検討する。 5・6) 地域診断データ活用と合意形成理論 概要:地域や社会全を対象とした健康づくりの介入をする場合、練り後する集団の健康に寄与する一方で一部の集団の不健康や不利益を生む場合がある。また、健康以外の事項へも良くも悪くも影響を与える可能性がある。こういった可能性が、ステークホルダー間の軋轢を生むこともよく起きる。どのように、安全で効果的で公正な社会環境整備が他の介入を行えばよいだろうか。近年knowledge translation, co-design approach, health impact assessment, community-based participatory researchなど、利用可能なデータ・エビデンスを活用しつつ、介入の計画段階からステークホルダーを広く巻き込みながら実施していくアプローチが注目されている。健康格差是正のための活動における合意形成手段としての観点からも重要な示唆がある。本講義では、健康格差の評価指標やモニタリングの方法と評価について解説した後、実際のデータを用いて「地域診断」を行い、課題や対象地域の優先順位づけや連携先組織選定についての演習をする。 7) 行動科学とゲーミフィケーションの応用(鎌田) 概要: 健康リスクを減らすには、食事や運動など、日々の生活の中での選択をより健康的なものにする必要がある。しかし、人間は常に経済合理的な選択をするわけではない。たとえばストレス状況下におかれた個人はより衝動的な選択をしやすいことが明らかになってきている。一方、これまでの公衆衛生対策の多くは、個人の合理的な選択を前提としてきたため、健康という価値を「買ってもらう」ことに成功してこなかった。ビジネス・マーケティングの世界では、客の購買意欲を刺激したり、購入行動への依存的な習慣化を促す様々な方法が経験として蓄積され、一部理論化も進んでいる。諸学の知見やビジネスの経験を応用して、我々が日々、不要なものを「思わず買ってしまう」ように、「思わず健康行動をとってしまう」ような新しいヘルスプロモーションができないだろうか。その効果はどれほどだろうか。倫理的な課題はないだろうか。アプリを使った成功事例を通して、行動経済学やゲーミフィケーションの健康格差対策への応用可能性について議論する。 8)構築環境(built environment)と健康(高木) 地域の構築環境が人々の健康と関連することが多くの研究によって報告されている。とくに身体活動研究の領域で活発に研究が進められているが、構築環境が関係する領域は食行動、精神的健康、犯罪からの安全、地域住民間の社会的相互作用など、多岐にわたる。本講義ではまず、構築環境と健康格差の関連について、先行研究や事例を紹介しながら、多角的に検討する。一方、構築環境に起因する健康格差を減少させるためには、そもそもなぜ構築環境の地域間格差が生じるのか、効果的な介入方法は何か、といった問いについて検討する必要がある。これらの問いについて、疫学、心理学、社会学、犯罪学などの観点も援用しながら議論する(高木)。 9)ヘルスコミュニケーションによる健康格差対策(石川) 概要:マクロ・メゾ・ミクロレベルで行動変容を起こす場合、それぞれどのようにアプローチしていけばよいのだろうか?本講義では、国内外のさまざまな事例をもとに、1)マクロレベルの行動変容とヘルスコミュニケーション、2)メゾレベルのソーシャルネットワークを活用した介入、3)ミクロレベルでの行動科学の歴史と限界、その後の転回、4)そもそも人間行動を理解するとはどういうことか、について学ぶ。 10)生活困窮者・マイノリティ支援(近藤) Vulnerable population approachとして、健康リスクの多い生活困窮者やマイノリティへターゲットを絞った介入を行う事がある。日本でも生活困窮者自立支援法の成立、生活保護受給者への健康管理支援事業が義務化されるなどの動きがある。特定の集団に特化した介入は、高い効果を期待できる一方、スティグマ付けするリスクもある。リスクを減らしつつ、効果的にサービスを提供する方法について、実践事例を交えながら議論する。 11・12)  特別講義:健康影響予測評価(HIA)演習* (藤野) 概要:「健康格差対策にむけた合意形成手段」の講義で解説したHIAを、事例を使って実際にグループで行う。HIAの第一人者藤野善久教授による特別演習セッション。この回だけの聴講参加を可能とする。希望者に呼びかけてください。 13・14) 課題発表
成績評価方法
出席と態度(30%)・レポート(40%)・課題発表(30%)
教科書
近藤尚己(著)「健康格差対策の進め方:効果をもたらす5つの視点」(医学書院)に準じて解説する。必須ではない。
参考書
1. 近藤尚己(著)「健康格差対策の進め方:効果をもたらす5つの視点」(医学書院) 2. 藤野善久・近藤尚己・竹内綾乃(著)「保健医療従事者のためのマルチレベル分析活用ナビ」診断と治療社(2013) 3. 川上憲人・橋本英樹・近藤尚己(編著)「社会と健康 健康格差解消に向けた統合科学的アプローチ」東大出版会(2015)
履修上の注意
「社会と健康I」に出席することが望ましい。健康教育学・健康社会学・医療コミュニケーション学などと関連する。公共政策大学院との合同開講。
その他
アンケート結果を受け、グループディスカッションの時間をさらに増やし活発に意見交換できるようにした。