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最終更新日:2024年4月22日

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リスク認知とコミュニケーション

原子力技術の開発・利用が人間・社会との間にいかなる諸問題を生み出しているか、あるいは生み出す可能性があるか、両者の新たな関係はいかにあるべきか、それらはどのように構築していくかについて、欧米をはじめ日本においても 90 年代後半より社会学や政策科学などトランス・ディスプリナリーな視野から議論がされてきたが、2011 年 3 月の福島原子力災害は日本国民に改めて問いかけている。
原子力利用は、原子力施設の立地地域社会、日本社会、国際社会との間でそれぞれ質の異な ったリスク問題を抱えている。それは健康リスクであったり、経済リスクであったり、政治的リスクであったりと多様であり、利害関係者の立場によって何をリスクとして認識するか、何のリスクを重大視するかも異なる。したがって原子力リスク問題への対処には、科学技術的な方策だけでなく、人々のもつ心理的要素の存在を十分認識しつつ、利害関係者間での問題認識の共有、対話、共考そして協働が求められる。
講義では、原子力技術のもつ社会的課題への理解向上と課題対応への基礎的知識の習得を目的とし、(1)科学技術リスクと社会、(2)リスク認知、(3)リスク・コミュニケーションとクライシス・コミュニケーションを主な柱として、技術リスクの社会的ガバナンスに係る諸課題について論じるとともに、リスク心理学の基礎的知識および専門家と非専門家のリスク認知ギャップの問題の理解を深めた上で、リスク・コミュニケーション活動の企業行動や規制活動における意義や技法など基本的な事項について実践事例を交え教授する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
3794-051
GEN-NP5m75L1
リスク認知とコミュニケーション
斉藤 拓巳
A1 A2
水曜
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講義使用言語
日本語
単位
1.5
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
工学系研究科
授業計画
I.科学技術リスクと社会 第 1 回 リスク社会の様相、その特徴と源泉(10/2 午前)(谷口) 高度科学技術社会におけるリスク問題に関わる諸現象(リスク情報の社会的増幅、リスクトレードオフなど)を概観するとともに、技術リスクが顕在化する要因、社会的危機に至る要因などを論じる。 第 2・3 回 原子力に対する社会の態度と評価基準、その現状(1/21 午後)(木村) 今までに実施されてきた原子力利用に関する社会調査を概覧し、特に福島事故以降の認識の変化等を踏まえ、原子力利用の社会的受容性に係る判断や態度決定に作用する要因などを論じる。なお、最新の社会調査結果を紹介するために、講義日は 1/21 を予定。 第 4 回 原子力開発利用におけるリスク・ガバナンスの課題(10/2 午前)(谷口) 原子力開発利用に伴うリスクに係る社会的意思決定及び対応を実現するための仕組み、いわゆるリスク・ガバナンスを構成する要素を概観した上で、それらを支える社会信頼、ステークホルダー・エンゲージメントの重要性及び社会的な課題について論じる。 II.リスク認知 第 5・6 回 ヒューリスティクスと判断バイアス(10/16 午前)(谷口) リスク認知研究から得られている主な知見を概説するとともに、人間の情報処理システムの,特定方向への偏り(バイアス)や判断のショートカット(ヒューリスティクス)などの特徴、及び集団が陥る判断の罠について、心理学的な視点から解説する。 第 7・8 回 一般市民のリスク認知と専門家との認知ギャップ(10/2 午後)(谷口) 科学技術リスクに対する社会調査研究の知見に基づき、一般市民と専門家のリスク認知ギャ ップの実態、その要因、対話・協議やリスクマネジメントへの影響などについて論じる。 III.リスク・コミュニケーション及びクライシス・コミュニケーション 第 9・10 回 リスク・コミュニケーション(10/30 午前)(谷口) リスク・コミュニケーションの歴史的経緯と社会的背景、リスク・コミュニケーションの要諦を説明したのち,具体例を紹介しながら,リスク・コミュニケーションの実践方法について解説する。 第 11・12 回 災害心理と災害情報(11/27 午前)(講師調整中) 災害時の人間行動について災害心理学の知見(災害対応の類型、避難行動に影響する人的因子、パニック神話など)について論じた上で、災害情報の伝達と受容や社会システムの機能、クライシス・コミュニケーション等について学ぶ。 第 13・14 回 メディア対応と技法(11/27 午後)(久保) メディア対応がなぜ重要かを論じたうえで、メディア・ジャーナリズムの視点や対応時の留意事項、クライシス・コミュニケーション時の留意事項、噂と誤報の統制について論じる。また、コミュニケーションの基本事項やファシリテーション技法について紹介する。 なお、原子力プラント見学を本科目の一部として位置付ける。
成績評価方法
リスク・コミュニケーションについては、演習での受け手の分析、受け手に配慮したメッセ ージ及び質疑応答への対応によって講義内容の理解も含めて達成度を評価する。 成績は、期末の課題レポート提出で判断する。
教科書
毎回の講義に関連する参考資料は適宜配布する。講義に関係する必読書は以下のとおり。他、参考文献・書籍リストはホームページに記載。
履修上の注意
基礎を固める(工学部共通)
その他
前提となる知識と項目:リスクコミュニケーション/メディア対応演習を受講する上での基礎となる科目である。
実務経験と授業科目の関連性
・ 原子炉技術者に必要とされる知識・技術・教養の修得 ・ 核燃料技術者に必要とされる知識・技術・教養の修得 ・ 行政技術者に必要とされる知識・技術・教養の修得 ・ 国際的にも通用する実践力・説明責任能力・コミュニケーション能力・技術倫理の修得