学部前期課程
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最終更新日:2024年3月15日

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学術フロンティア講義 (これからの食糧生産を支える植物・土壌科学)

これからの食糧生産を支える植物・土壌科学
今世紀半ばには90億人を超えると予想されている世界の人口を支えるためには作物生産性の向上が必須である。そのためには、土壌が有する物質変換や肥沃度維持の仕組み、植物の養分吸収や栄養環境適応の仕組みを明らかにして生産性向上に結び付けることが必要である。また、問題土壌や環境変動下での作物生産、雑草を克服した作物生産は今後の重要課題であり、劣悪な土壌や病害虫などのストレスに耐性を持つ作物の育種や、根寄生雑草を防除する新たな化学的手法が開発されている。一方、生産性向上と環境保全を両立した農業技術の開発が地球環境と地域環境の保全のために重要である。本授業科目では、このような研究に携わっている農学部ならびに生物生産工学研究センターの教員による最先端の講義を行う。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31658
CAS-TC1100L1
学術フロンティア講義 (これからの食糧生産を支える植物・土壌科学)
藤原 徹
S1
月曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
1
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
第1回(4/13)火曜日 ガイダンスと講義 「植物の栄養吸収にまつわる問題と研究の役割」 藤原 徹(農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 植物栄養・肥料学研究室 教授) 第2回(4/19) 「環境保全型農業を目指した土壌生物研究」 妹尾啓史(農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 土壌圏科学研究室 教授) 第3回(4/26) 「土壌の物質循環と植物の生育を支える微生物の働き」 大塚重人(農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 土壌圏科学研究室 准教授) 第4回(5/10) 「放射線で視る植物の生命活動」 小林奈通子(農学生命科学研究科 アイソトープ農学教育研究施設 放射線植物生理学研究室 准教授) 第5回(5/17)「植物がつくりだす二次代謝産物の機能とその利用」 岡田憲典(農学生命科学研究科  アグロバイオテクノロジーセンター 環境保全工学部門 准教授) 第6回(5/24)「植物の栄養環境適応機構 〜窒素とリンの獲得のために〜」 柳澤修一(農学生命科学研究科  アグロバイオテクノロジーセンター 植物機能工学部門 教授) 第7回(5/31)「アフリカ・モンゴルの農牧畜業問題の解決に向けた基礎研究から国際共同研究体制の構築と実施」 浅見忠男(農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 生物制御化学研究室 教授)
授業の方法
講義による。各回の概要は次の通り。 第1回「植物の栄養吸収にまつわる問題と研究の役割」藤原 徹 植物の生育は土壌からの栄養吸収に依存している。土壌栄養はほとんどの場合不適切であるので、人類は施肥により作物生産を高め反映してきたし、植物は進化的に栄養適応能を得てきた。本講義では農業を中心に植物の栄養吸収特性に伴う現象や問題について触れつつ、植物の持つ優れた栄養応答機能の研究例やその展開について紹介する。 第2回「環境保全型農業を目指した土壌生物研究」妹尾啓史 作物生産のためには窒素肥料の施用は必須であるが、近年、大量の窒素施肥に由来する環境・エネルギー問題(石油の大量消費、温室効果ガスの発生、硝酸溶脱による水系汚染)が深刻になっている。これを解決するためには、少ない窒素肥料での作物生産を可能にする土壌管理や、温室効果ガス発生を削減する農業技術の開発が必要であり、土壌における窒素変換を駆動している土壌微生物研究はその重要な基盤をなす。講義では、我々が進めてきた「水田土壌の窒素肥沃度維持を担う微生物基盤の解明と低窒素農業への応用」について紹介する。 第3回「土壌の物質循環と植物の生育を支える微生物の働き」大塚重人 土壌には様々な微生物が生息しており、その数は膨大である。これらの微生物の働きにより、土壌環境は物質循環・物質変換の活発な場となっている。この講義では、炭素、窒素、リン、イオウといった物質がどのように土壌圏で循環し、そこに微生物がどのように関わり、どのように植物の生育を支えているのか、また、その機能を有効利用しようとする研究にどのようなものがあり、どこまで進んでいるのかを紹介する。 第4回「放射線で視る植物の生命活動」小林奈通子 レントゲンによる最初の放射線の発見から約120年。医療や物理学の分野だけでなく、農学・生命科学の分野でも放射線は生物の不思議に迫る重要なカギとなってきた。「導管は本当に水の通り道なのか」、「根から茎に入ったイオンは葉に向かうのか」。本講義では最新の放射線利用技術によって描き出される植物の生命活動の実態を紹介する。 第5回「植物がつくりだす二次代謝産物の機能とその利用」岡田憲典 移動できない植物は、自らの生育を維持するため、また、子孫繁栄のために役立つ数多くの化合物をつくりだしている。我々人間はそれらを「味・色・香・薬・毒」など様々な用途で利用している。本講義では、植物のつくりだすこれらの有用二次代謝産物の役割とその利用方法を紹介するとともに、最先端の遺伝子研究手法によって産み出される、植物二次代謝産物を強化した病虫害ストレス耐性作物の開発研究について紹介する。 第6回「植物の栄養環境適応機構 〜窒素とリンの獲得のために〜」柳澤修一 独立栄養生物である植物は外界から無機物を栄養として吸収し、必要な有機物を生合成して成長している。特に重要な土壌栄養素は、窒素栄養(多くの場合、硝酸イオン)とリン栄養(リン酸イオン)である。自然環境では、これらの栄養素の不足によって植物の成長が制限されており、このため、植物は栄養環境に応じて遺伝子の発現を変化させて形態や代謝を調節して、異なる栄養環境に適応している。分子レベルでの研究によって、植物は異なる栄養環境に適応するための巧妙な仕組みを持っていることがわかってきた。この仕組みについて説明するとともに、農業で用いられる窒素肥料とリン肥料によって生じる環境ストレスについても若干紹介する。 第7回「アフリカ・モンゴルの農牧畜業問題の解決に向けた基礎研究から国際共同研究体制の構築と実施」浅見忠男 根寄生植物が一旦作物に寄生すると収穫が絶望的になる。この被害は特にアフリカサハラ砂漠南部地域における穀物栽培において顕著であり、貧困の主要因となっている。根寄生植物の種子はすでにアフリカの耕地を汚染しており、微小なために物理的な除去は不可能である。この種子は土中で10年間以上休眠できるが、雨期になり温暖湿潤な環境に加えて宿主となる作物が存在すると、宿主根から滲出されるストリゴラクトン(SL)という物質の刺激を受けて根近傍の種子が発芽し、その後寄生を開始する。この寄生を防ぐための方法として、抵抗性品種や化学物質を利用する方法が唱えられているがこれまで成功例はない。我々の研究グループではこの問題を化学的に解決するために、根寄生雑草におけるストリゴラクトン受容機構の解明とその制御方法の開発を行ってきた。ストリゴラクトン機能の制御を通した、基礎研究からアフリカでのフィールド研究までの概略と国際共同研究の成立と運営までについて述べる。
成績評価方法
各回の講義について興味深いと感じた点、印象に残った点を400字程度以内にまとめ、ITC-LMSの課題提出にテキスト直接入力してください。提出の締切りは講義の翌々日の水曜日午後5時とします。
履修上の注意
これからの食糧問題や環境問題の解決に興味を持っている学生の受講を希望します。 化学と生物についての基礎的な知識を必要とします。 講義資料がある場合は事前にICT-LMSにアップロードしますので講義の前にチェックしておいてください。