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最終更新日:2024年3月15日

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情報法

情報法
 現在もなお先の見通しのつかない新型コロナウイルスの感染拡大は、デジタル化に伴う様々な社会経済活動の変化を促し、国境を越えるデータ統治(global data governance)の覇権争いを顕在化させたと言える。人工知能(AI)、ビッグデータ解析、モノのインターネット(IoT)、ロボット等の技術の社会実装が公的部門・民間部門の枠を越えて進む中で、複雑性や営業秘密等が絡んでブラックボックスとなりがちな自動化されたアルゴリズムに基づく意思決定システムにおいて、公正性・公平性をいかに検証可能な形で担保するかといった、新たな課題も生じている。そこでは、関連する諸利益が鋭く対立し、従来の利害調整の仕方は最善なのかが、改めて問い直されている。

 こうした中で、そもそも、社会において情報が自由に流れることの意義とは何であろうか。この自由は、いかなる価値・原理や主体・制度・デザインによって支えられているのか。そして、この自由に対して、政府による規制ないし何らかの強制力を伴うルール形成が許されるべき場合というのは、どこの国の誰が誰に対していかなる判断基準や理由づけをもって決めるのか。また、そこでの規制の方法・手段として最適なものは何か。例えば、個人情報や知的財産権・財産的情報等の保護は、自由な情報流通という要請と衝突するものであろうか。さらに、国境を越えるデータ統治をめぐる諸解題の解決に向けて、日本法の観点から、いかにすればよりプロアクティブな国際連携・貢献ができるか。

 この授業では、これらの問いかけの下で、情報と法をめぐる多岐にわたる課題のうち、いくつかの具体的なトピックを取り上げ、受講生との積極的な質疑応答を行いながら、解説を加えていく。また、例えば、SNS・ソーシャルメディアにおけるアクセス制限・アカウント管理・内容規律(content moderation)、EU一般データ保護規則(GDPR)における「忘れられる権利」と検索エンジン事業者の責任、アメリカの国家安全保障におけるアルゴリズムによる監視とプラットフォーム事業者の役割、アメリカ著作権法の下でのフェアユースと「ユーザーライツ」といった、現在進行形で解決策が模索されている争点についても、比較法的観点を取り入れつつ、受講生と議論を行うこととしたい。

 議論のプロセスを通じて、情報に関する革新的技術がもたらす社会変容の含意を探るとともに、そこでの課題解決に向けた対抗利益間の調整におけるバランスのとり方、国境を越えるデータ統治の今後の行方について、検討することを目指している。

 授業の詳細な内容・方法は、第1回のイントロダクションで説明する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
25-6641
GLP-LS6413L1
情報法
山口 いつ子
A1 A2
火曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
法学政治学研究科
授業計画
第1回 イントロダクション  ―日本の情報法のコンセプション 第2回~第4回 情報の自由の価値原理とデザイン  情報・データ・「知」をめぐる価値創造とルール形成、情報・表現の自由の憲法原理、自由の限界と対抗利益間のバランス、個人の尊厳と人格権、権力の抑制と均衡、報道・取材の自由、知る権利と公開性、公/私・デフォルト/例外・公開/秘密の境界設定 第5回~第8回  情報の自由と規制  国境を越えるデータ統治と権力統制、メディア別(印刷・放送・通信)の規制枠組みとその限界、サイバー空間・アーキテクチャ・アルゴリズム、情報流通における中間媒介者(intermediary)の責任、プラットフォームのアクセス制限・内容規律、情報公開・開示、国家安全保障・セキュリティ・秘密 第9回~第12回 情報の自由と保護  プライバシー・個人情報・データ保護、「忘れられる権利」とイノベーション、アルゴリズムのブラックボックス問題と公正性・公平性、知的財産権と自由な情報流通との調整、著作権と表現の自由とのバランス、デジタル環境のユーザーライツをめぐる憲法原理と私的秩序形成 第13回 全体的な議論・質問
授業の方法
・双方向授業を中心に行う 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、本シラバス記載時点の予定では、原則としてオンライン授業とし、今後の状況に応じてハイブリッド形式も検討する。詳細については、UTAS・ITC-LMS等で改めて通知する。
成績評価方法
本シラバス記載時点の予定では、以下のとおりとし、詳細はUTAS・ITC-LMS等で改めて通知する。 ・筆記試験を行わない ・平常点を考慮する ・レポートを課す ・成績をA+・A・B・C+・C-・F で評価する
教科書
教科書は使用せず、授業資料を配布予定。
参考書
参考書として、例えば、長谷部恭男・山口いつ子・宍戸常寿編『メディア判例百選 第2版』(有斐閣・2018年)、曽我部真裕・林 秀弥・栗田昌裕『情報法概説 第2版』(弘文堂・2019年)、宍戸常寿・大屋雄裕・小塚荘一郎・佐藤一郎編著『AIと社会と法』(有斐閣・2020年)、松井茂記・鈴木秀美・山口いつ子編『インターネット法』(有斐閣・2015年)、宇賀克也・長谷部恭男編『情報法』(有斐閣・2012年)、中山信弘『著作権法 第3版』(有斐閣・2020年)、山口いつ子『情報法の構造―情報の自由・規制・保護』(東京大学出版会・2010年)、Itsuko Yamaguchi, A Japanese Equivalent of the “Right to Be Forgotten”: Unveiling Judicial Proactiveness to Curb Algorithmic Determinism, in THE RIGHT TO BE FORGOTTEN, at 291-310 (Franz Werro, ed., 2020) Springer, https://link.springer.com/***** ; Itsuko Yamaguchi, The Rise of “Global Information Law”: Centennial Perspectives on the Conceptualization of Japanese Information Law, 100 Journal of Information Studies 47-63 (2021), http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/***** 等を参照。
履修上の注意
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今後の対応について、詳細はUTAS・ITC-LMS等で改めて通知する。
その他
隔年開講