学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2024年3月15日
授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。
現代法の基本問題
ヨーロッパ統合と法
EU加盟国における,国内法の「ヨーロッパ法化」が顕著な現象として注目されるようになって既に久しい.このような現象は,EC/EU法における直接適用性・国内法に対する優越原理の形成と不可分である.
しかし,ヨーロッパ法といえども,一日にして形成されたものではない.往々にして見受けられるデマゴーグの主張するところとは異なり,ヨーロッパ法は,決して加盟国と全く無関係に「ブリュッセル」が形成してきたものではなく,既に半世紀にわたる,EC裁判所(リスボン条約発効以後は,EU裁判所と改称)と国内裁判所との相互影響関係,近年頻繁に使われるようになった言葉を用いれば「裁判官の対話(dialogue des juges, judicial dialogue)」を通じて形成されてきたものである.
残念ながら,日本における従来のヨーロッパ法研究は,ともすればヨーロッパレヴェルの動向のみを対象とし,その動態的な性格を軽視しがちであったが,ヨーロッパ法は,決してEU裁判所が象牙の塔の中で無から作り上げたものではなく,加盟国の国内裁判所との間の相互的影響のもとに形成されてきたものであることを忘れてはならない.換言すれば,国内法の「ヨーロッパ法化」は,一面では,ほかならぬ加盟国の国内機関の手によるものなのである.
このような相互的影響は,実定法解釈学としてのEU法研究のみならず,アメリカを中心とする政治学研究の対象としても注目を集めるようになり,「法と経済学」ならぬ「法と政治学」,具体的にはjudicial politics研究として少なからぬ研究業績が蓄積されてきている.ヨーロッパ統合の特色は,「法による統合」である点にあると言われてきたが,これは逆に言えば,EU法が単なる実定法解釈に止まらない政治的意義を持つということであり,EU法の形成過程を深く理解するためには,政治学との協働が欠かせない.
そこで,今年度は,judicial politics研究の展開に大きな影響を与えた論文(Stein, Eric, Lawyers, Judges, and the Making of a Transnational Constitution, American Journal of International Law 1981, vol 75, pp. 1-27; Weiler, Joseph H.H., The Transformation of Europe, Yale Law Journal 1991, vol. 100, pp. 2403-2483)を中心に,その後の研究の展開を概観する合計約10本程度の論文(英語)(開講時にリスト配布予定)を取り上げる予定である.
本授業は,judicial politicsに関する総論的論文および各論的論文の均衡,参加者数等をも考慮し,適宜選択した論説を,参加者(参加者の人数によっては,グループ)が毎回分担報告する形式で進める.
指定された文献を手がかりとして,EU裁判所と国内憲法裁判所との相互影響関係を具体的に検討することにより,ヨーロッパ法に対する理解を深めることが,本講の目的である.
MIMA Search