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最終更新日:2024年3月15日

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市民社会・国家・教育Ⅱ

近年、社会政策において〈教育〉の役割への関心が高まっている。

例えば、現在の「子どもの貧困」対策の主流をなすのは人的資本論を背景とした社会的投資アプローチであり、学習支援などの教育的施策が重視される。
予防的な観点からも、就学前の子どもへの保育・教育投資が、長期の貧困リスクの削減につながることが指摘される。
成人に対しても、非正規労働者や生活困窮者に対する職業教育・訓練を通じた「自立支援」が有効とされるだけでなく、人的資本投資を社会保障の中心に据えるアクティベーションが北欧型福祉国家の中核にある仕組みとして「発見」され続けている。

これらにおいて強調されているのは、人的資本の形成支援が単なる弱者支援でなく、経済成長や社会発展にとっても機能的であり、社会全体にプラスになるというメカニズムである。
社会的投資という側面を強調する論理は中間層の支持も得やすく、2010年代の民主党政権/自民党政権を通じて社会政策言説の中心に存在していた。教育学領域における教育社会学的/教育経済学的問題設定の隆盛も、上記の文脈と無関係ではない。

一方で、社会的投資アプローチに対しては、ネオリベラリズムとの収斂など深刻な問題も指摘されている。
以上を踏まえた上で考えていきたい論点は以下の通りである。

・社会的投資アプローチは、「子どもの貧困」や社会的排除の解決に、どの程度有効であり、また限界があるのか。ネオリベラルなワークフェアといかなる点で異なるのか。
・ポストフォーディズムの進行や技術革新などによる産業構造の転換の中でも、人的資本投資の有効性は維持されるのか。
・社会的投資アプローチと、権利論的アプローチやケイパビリティアプローチはどういう関係にあるのか。後者でないと迫れない問題はあるのか。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
23-212-09
GED-IE6241S1
市民社会・国家・教育Ⅱ
仁平 典宏
A2
月曜3限、月曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教育学研究科
授業計画
第1回:イントロダクション 第2回~第14回:テキスト購読に基づくディスカッション 第15回:総括討論とまとめ
授業の方法
毎回指定された文献や論文を購読し、レジュメで内容を確認した上で、ディスカッションを行う。
成績評価方法
授業への出席・議論への参加を重視する。 具体的には、担当回のレジュメ作成、議論への参加を3:7の比率で評価する。
教科書
各回の授業で用いるテキストを初回に提示する。
参考書
Nathalie Morel eds., 2012, Towards a Social Investment Welfare State?, Policy Press. 大原社会問題研究所編2015『現代社会と子どもの貧困――福祉・労働の視点から』大月書店 Ivar Lodemel, Amilcar Moreira, 2014, Activation or Workfare?: Governance and the Neo-Liberal Convergence, Oxford University Press. アマルティア・セン2006『人間の安全保障』集英社 宮寺晃夫編2011『再検討――教育機会の不平等』岩波書店 ジェームズ・ヘックマン2015『幼児教育の経済学』東洋経済新報社 原伸子2016『ジェンダーの政治経済学――福祉国家・市場・家族』有斐閤
履修上の注意
テーマに関心があれば専門領域は問わない。