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最終更新日:2024年4月22日

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人文情報学研究 (I)

人文学のためのテキスト・知識の構造化
人文学におけるこれまでの研究は、紙媒体を前提として長く育まれてきた膨大な暗黙知によって成立し発展してきた。この暗黙知を意識する必要が出てきたのはデジタル媒体を避けて通れない状況が現出したからに他ならない。欧米ではすでに30年にわたるTEI(Text Encoding Initiative)ガイドラインへの取り組みにより、西洋中世写本研究から言語コーパスに至るまで、テキストに内在する暗黙的な構造を明らかにしてデジタル媒体へと還元してきており、欧米で発展するデジタル・ヒューマニティーズにおける「方法論の共有地(Methodological Commons)」という基本理念を体現してきた。一方、日本をはじめとする非欧米文化圏の人文学は未だこの動向への参画が決して十分とは言えず、ここから学び得ることは少なくない。

また、ウェブを中心としたデジタル学術情報基盤の世界では、研究データや資料を相互に接続し知識基盤を構築する枠組みとしてRDF(Resource Description Framework)が浸透しつつあり、さらに、専門分野における概念同士の関係性や人物・地名の関係といった知識の記述自体にもこれを用いようとする動きが広まりつつある。

そこで、本授業では、二つの柱を立てる。まず、TEIガイドラインを通じて人文学がこれまで積み重ねてきたデジタル技術による暗黙知の明示的構造化の状況について理解する。次に、RDFを扱うことで、資料を接続し知識を構造化する枠組みへの取り組み方を習得する。そのようにして、洋の東西を問わず、取り組む研究課題を素材としてその可能性について検討し、デジタル媒体を前提とした研究環境へと適切に対応できるようになるための基礎を涵養することを目指す。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
21220092
GHS-XX6A01L1
人文情報学研究 (I)
大向 一輝
S1 S2
金曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
人文社会系研究科
授業計画
本授業では、まず、データの構造化の基本的な考え方について学び、マークアップ言語として広く用いられているXMLの基本を習得した上で、TEIガイドラインの学習に進む。 当初のTEIは大きな技術的な制約の下で取り組みが進められ、その過程では多くを捨象せざるを得ず、日本語を含む多言語対応も非常に困難なものであった。技術の発展とともに、TEIは多言語対応のみならず様々な複雑な構造にも対応できる形で発展を遂げつつある。一方、これはこのことに取り組む人文学のコミュニティの発展の歴史でもあり、研究者コミュニティのあり方の展開でもある。西洋において発展したこのあり方が東洋では未だ途上にあることについて、とりわけ、2021年のルビの導入に至る議論も踏まえつつ、技術の発展という観点のみならず、国際的な人文学コミュニティの様態という側面にも触れる。 TEIは、実践を通じて理解をより深めることが可能である。したがって、その概要の講義に入った段階から、構造化の実践も含める形で授業を展開する。   もう一つのテーマであるRDFに関しては、その国際的な受容の状況を踏まえつつ、ウェブ上の知識世界への結びつけかたの基本的な考え方とその実際について学ぶ。とりわけ、RDFによる人文知の構造的記述に関しては、現在は実験的な段階であり、理論・実践ともに積極的な取り組みは受講生自身にとっても知的に刺激されることが多いだろう。   TEIにおいてもRDFにおいても、他の様々な人文学向けの情報の構造化に関わる技術・規格とも密接に関連しており、それらについては、受講生の関心に応じて適宜採り上げる。 また、構造化資料は視覚化技術と密接に結びついており、視覚化は構造化の意義を明らかにする手段の一つでもある。視覚化技術の詳細についてはAセメスターの授業で扱うが、本授業においても、構造化の意義を確認することを目指し、簡便に活用可能ないくつかの視覚化手法を扱う。 1. イントロダクション 2. XML入門(ツリー構造・タグ・属性・名前空間) 3. TEI準拠テキストの基本 4. 人文学のために必要な要素とその付与1 5. 人文学のために必要な要素とその付与2 6. テキストの外部要素とのリンク 7. 作成したテキストの利活用 8. TEIの処理1(XSLT) 9. TEIの処理2(XSLT) 10. RDF基礎(グラフ構造・トリプル・URI) 11. RDFの表現と問い合わせ(スキーマ・語彙・SPARQL) 12. RDFによる知識の構造化(Linked Open Data・知識グラフ) 13. まとめ
授業の方法
今年度はハイブリッド形式で実施する。講義と実習の組み合わせとなる。実習については、授業で配布するソフトウェアを用いて実際に構造化に取り組む。したがって、受講生はWindows・Mac・Linux等が動作するノートパソコンを授業に持参すること。またオンライン接続環境も必須である。
成績評価方法
実習の成果、及び期末レポートを以て成績評価を行う。
教科書
教科書は特にない。適宜参考資料を提示する。
参考書
後藤真・橋本雄太編『歴史情報学の教科書 歴史データが世界をひらく』文学通信 Nancy Ide, C. Michael Sperberg-McQueen, Lou Burnard, 「TEI:それはどこからきたのか。 そして、なぜ、今もなおここにあるのか?」『デジタル・ヒューマニティーズ』2018年12月, pp. 3-28. https://doi.org/***** 後藤真・橋本雄太編『歴史情報学の教科書』(文学通信) 京都大学人文科学研究所共同研究班編『日本の文化をデジタル世界に伝える』(樹村房) 下田正弘・永崎研宣編『デジタル学術空間の作り方』(文学通信)
履修上の注意
受講生はWindows・Mac・Linux等が動作するノートパソコンを授業に持参すること。またオンライン接続環境も必須である。
その他
下記のサイトも適宜参照のこと https://www.tei-c.org/***** (TEI P5 ガイドライン) https://wiki.tei-c.org/***** (TEI協会東アジア/日本語分科会) https://teach.dariah.eu/***** (西洋中世写本構造化のMOOC)