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最終更新日:2024年4月1日

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韓国朝鮮史専門演習

ナショナリズムと文化財―朝鮮半島と日本―
 共通の歴史的記憶や誇るべき文化のシンボルとしてしばしば扱われる文化財は、近代国家の国民意識の統合を図るためにも用いられてきた。また、戦争や植民地支配で持ち出された文化財や、領土変更などを背景に複数の国家にその由来が関係している文化財については、それが「どの国民のものか」、「あるべき場所に返還すべきである」といった争いが生じることがある。
 しかし、もちろん、文化財それ自体がなにか対立を起す要因が潜在しているわけではない。逆に、優れた工芸品や美術品、長く伝えられた歴史的記録や建築物等々の文化財は、国籍や民族その他の属性を超えて、人類の営みのすばらしさを伝え、人びとを感動させるものである。それゆえ、むしろ、文化財の鑑賞や返還、寄贈、貸与などが、社会集団間の相互理解を促進し、友好的な関係を築くことに寄与することも多い。この授業では、こうした、文化財とナショナリズムとの関係を論じ、文化財をめぐる政策、市民社会における活用の望ましいあり方を考えていく。
 その際、この授業では、朝鮮・韓国の文化財に焦点をあてることとしたい。周知のように、日韓両国民の間では、一部においてナショナリズムを刺激しあい、感情的対立が生み出されている。そうした対立は、文化財をめぐる問題とも無縁ではない。植民地期の支配・被支配の関係の中で、朝鮮半島にあった古美術品等が、持ち出されたことをどうとらえるか、その返還を進めるか、否か、返還するとしてどのような方法、手続きで行うべきか等は、議論の対象となってきた。さらには、日本にあった朝鮮由来とされる文化財が韓国人窃盗団によって盗まれ、それが日本に戻されないということが問題にもなっている。そうしたなかでも、植民地支配を清算し、日韓・日朝の人びとの良好な関係を築くために、文化財返還等の取り組みを進めている人びとも存在する。そうした諸点に注目することで、文化財とナショナリズムの関係について理解を深め、問題の所在を明確化していくことが可能になるはずである。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
08C2941
FAS-CA4R19S1
韓国朝鮮史専門演習
外村 大
S1 S2
火曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
教養学部
授業計画
4月07日 ガイダンス資料の配布 授業の概要と目標、参考文献などについての資料をITC-LMSを通じて配布する。 4月14日 ガイダンス資料の配布 授業の概要と目標、参考文献などについての資料をITC-LMSを通じて配布する。 4月21日 近代国家における文化財 近代国家において文化財の管理や活用がどのように行われて来たか、それがどんな意味を持ってきたかを議論する。 参考文献:ITC-LMSを通じて配布します。 4月28日 植民地期朝鮮の博物館政策 植民地期朝鮮での文化財の保護、朝鮮総督府の博物館政策と朝鮮民衆の反応を論じる。 参考文献:ITC-LMSを通じて配布します。 5月12日 植民地・占領地における文化財の「調査」と「管理」 日本の植民地である朝鮮や台湾、あるいは日中戦争期の中国の占領地で、日本人がおこなった古跡の調査や、文化財の発掘、調査等がどのように行われたか、そこにどのような問題があったのかを検討する。 参考文献:森本和男『文化財の社会史』彩流社、2010年。 5月19日 植民地期朝鮮における日本人と文化財―柳宗悦 前回に続き、日本人でありながら朝鮮の文化財について理解を示し、その保存や研究の活動を続けた人びとについて論じる。具体的には柳宗悦を取り上げる。 6月9日 在朝日本人関係の文化財をめぐって 植民地朝鮮での日本人の活動にかかわる建築物等は、多くが壊されたが、なかには文化財として保存されたり活用されたりしているものもある。それについて、韓国の市民はどのような意識をもっているのかを学ぶ。 ゲストスピーカー:韓国啓明大学研究員・李東勲さん 6月16日 世界遺産と文化財―朝鮮通信使 日韓・日朝間の友好的な関係を示す歴史として、朝鮮通信使があり、それをもとにした市民の交流なども各地で取り組まれて来た。朝鮮通信使に関連する文化財の活用や、市民交流について、具体的な取り組みを進めている団体の関係者を招き、お話しをうかがって議論を進める。 ゲスト:関係自治体職員の方 6月23日 世界遺産と文化財 世界遺産がかかえている課題、とりわけ、国家間の対立につながりかねない問題について、現状を把握し、それをどう克服していくかを考えていく。 6月30日 在日朝鮮人と文化財 植民地期に渡日し、何世代にもわたって日本に暮らしている在日朝鮮人は異郷の中でも独自の文化を継承してきた。その営みの中で用いられてきた道具や記録も文化財となりうる。それらを収集してきた在日韓人歴史資料館の関係者からお話しをうかがう。 ゲストスピーカー:在日韓人歴史資料館関係者 7月7日 北朝鮮にある文化財とその活用 北朝鮮の歴史的建造物や遺蹟、そこから発掘された遺品などは、日本にいる者や韓国人にとっては、接しにくく、その情報も得にくい。これについて、北朝鮮を訪問され、現地の研究者と交流されている方をお招きし、お話しいただいたうえで、討論を行う。 ゲストスピーカー:日朝間の交流の活動関係者 7月14日 文化財返還運動の展望 日韓間で問題となっている文化財返還について、その活動がどのように行われてきたか、課題や今後の展望についてうかがう。 ゲストスピーカー:調整中
授業の方法
教員が指定した文献を読み、受講生が報告、討論する授業のほか、ゲストとして招き、お話しをうかがって、議論を行う授業も予定している。 毎回の授業に関して、授業レポートを作成してもらいながら、授業に対する理解を深める。 学期の途中で、本授業の責任講師が招聘講師の授業の内容を整理し、履修者の間で、理解度を深め、論点を整理する時間を持つ。 オムニバス講義という形式で進め、毎回、論点を整理するコメントシートを配布し、成績評価に反映する。
成績評価方法
毎回の授業に対するコメントの提出、および学期末レポートの提出、そして平常点(授業への積極性・貢献度)などを総合的に勘案して成績評価を行う。
教科書
特に指定しないが、授業で関連の論文や著書を紹介するので、各自の学習に活用すること。
参考書
授業時間に紹介する。
履修上の注意
近代の日朝関係史について、基礎的な通史を1冊以上読んだうえで受講することが望ましい。