現代トルコ語の文献講読を行う。受講生のレベルに合わせ、毎回テキストを語学と内容の両面から解説しつつ、ゆっくり読み進めていく。前半はあらかじめこちらが用意した短いニュース記事のテキストを講読する。後半に講読するテキストは、初回時に受講者の興味・関心を尋ね、それを踏まえた上でSセメスターの途中で決定する。
ちなみに昨年度は、前半で新型コロナ・ウィルス感染症の拡大にともなうトルコの大学の状況を伝えるMilliyet紙の記事「大学はいつ何日に始まるか?(“Üniversiteler ne zaman, hangi tarihte başlayacak?”)」、後半ではトルコ共和国成立直後のトルコ国内のギリシア正教徒の改宗問題を扱う歴史学の学術論文「トルコ・ギリシア住民交換からの抜け道としてのイスラーム改宗(“Mübadeleden Kurtulma Çabası Olarak: İhtidâ”)」を講読した。
また一昨年度は、前半に2019年3月31日に行われたトルコ地方選挙に関するトルコ語版BBCウェブサイトの記事「選挙結果:誰が何を勝ち得、誰が何を失ったのか?(Seçim Sonuçları: Kim Ne Kazandı, Kim Ne Kaybetti?)」、後半にバルカン半島のトルコ語諸方言の分化に関する言語学の論文、ハザイ「バルカン諸方言の歴史について(G .Hazai, "Rumeli Ağızlarının Tarihi Üzerine")」を講読した。
例年受講生の志向に合わせて歴史学か言語学の学術論文が選ばれることが多いが、希望によって文学作品を講読することもある。最近ではトルコを代表する作家オルハン・ケマル(Orhan Kemal 1914-1970)の短編小説「本を売ることについて(Kitap Satmaya Dair)」や1920年代の共和国初期の探偵冒険小説、ベフリュル・ダーナー(Behlül Dana), 『悪魔のハーディイェ(Şeytan Hadiye)』 の最初の章「プリンセスの髪飾り("Perensesin tarağı")」 (アラビア文字テキストをラテン文字に起こしたもの)を講読した。
学術論文を講読する場合は、論文でよく用いられる用語や表現のほか、注の付け方や参考文献、論文の構成や方法論上の問題にまで踏み込んで批判的に解説する。文学作品の場合は、作品の内容のみならず、関連事項や時代背景なども合わせて解説する。