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最終更新日:2024年3月15日
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経済思想史
経済思想史
本講義は以下のような主題を設定する。すなわち、過去から現在[=いま]にいたるまでの経済思想の推移に注目して、現在、どのようにして現代[ほぼ20世紀に相当]が終わろうとしているのかを明らかにする。19世紀の経済思想が自由の正当化で特徴付けられるとするなら、20世紀のそれは概括するなら、自由を維持しながらも保護・介入・規制・誘導を正当化してきた。こうした現代の経済思想がなぜ、いま終焉を迎えようとしているのか、これが本講義の設定する究極の問いである(この終焉のあとにいかなる経済思想が支配的になるのかという将来予測の問題は、科学の業(わざ)ではなく、それ自体が価値判断を含む思想・宗教・運動・政策の、すなわち現在以降の人為に委ねられた問題なので、本講義では扱わないが、諸君は一個の人間として存分に考えるべきだと思う)。この問いに答えるためには、現代の経済思想が19世紀のそれとのいかなる対抗・緊張関係の中から生成したかを知らねばならず、19世紀に遡る必要があるが、この講義ではそれ以前の前近代と近世についても簡単に論及する。経済思想の選択肢は現代と19世紀の2種類に限定されてはいないことを知るには前近代や近世を見るのは有益だし、専門科目1の経済史との対応関係も前近代から見ておく方が万全になるからである。
現代の終焉というテーマは、より具体的には少なくとも以下の二つに分けることができる。第1に、経済思想の歴史とは自由と保護の関係を調和させてきた過程だが、それはどのような変化を経て、なぜ現代の終焉(思想史的には、現代を正当化する思想の終焉)に到達しつつあるのか。第2に、そうした変化の背後に、いかなる人間観と哲学的立場の変化が作用しているのか。
なお、本講義は、「経済思想史」と銘打った書物のように、過去の高名な経済学者や偉大な思想家・偉人・賢人の頭の中にあった経済思想を歴史的に明らかにすることを主たる眼目とはせず、むしろ、それぞれの時代・地域に生きた人びとの日々の生活=経済活動を方向付け、そこに影響を与え、また人びとの社会的行為や選択に表現された思想を主たる認識対象とする。それは、経済学者や思想家の思想と普通の人びとが日々実践してきた思想とが一致する保証はなく、現実の経済活動に反映し、表現されたのは後者であると想定するからである。ただし、学者や思想家の思想は彼らが書き残したものから比較的容易に再構成できるが、名もなき人びとの日々の思想は、再構成すること自体に大きな困難がともなうので、その点に関する方法的な工夫を伝授することも本講義の副次的な眼目である。
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