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最終更新日:2024年4月22日

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応用倫理特殊講義Ⅶ

気候崩壊の時代を生き延びる‐人新世の倫理・経済・宗教
気候変動は、現代世界の危機を象徴し代表する危機と言ってよい。しかもこの危機は単なる環境問題の枠におさまらない。今日のグローバル化した世界においては、地球生態系の崩壊に加えて、貧困の拡大(貧富差の極大化)、さらには世界戦争という三つの危機が、混然一体となって進行している。
この複合的な危機の原因を探っていけば、国民国家と資本主義経済という、二重の権力が肥大することによって引き起こされる危機であることが見えてくる。これを軍事力と経済力の複合体と言いかえてもよい。
この複合体の起源は、遠く古代世界に現われた諸帝国にまでさかのぼる。古代帝国の軍事的・経済的な支配に対する一種の対抗運動として世界各地に現われたのが、今日にまで続く伝統的な宗教思想だった。哲学者ヤスパースはそれを「枢軸時代」と名づけた。
もっともキリスト教は国教化して帝国宗教となって以来、そのような原点からしだいに離れていった。とりわけ近代以降、北大西洋地域のキリスト教諸国家は、果てしない経済成長と覇権争いによって、生態系破壊に象徴される地球規模の危機の原因となった。西欧キリスト教文明は、今まさにそのようなグローバルサウスからの告発に直面している。
経済、宗教、道徳がからまりあった危機に直面する現代において、それらの垣根を超えるような視点が必要となる。とりわけ軍事力とも金(マネー)の力とも異なった理念と実践こそが必要不可欠となる。そればかりか、既存の社会システムの崩壊を予期しつつ、その先に地球生態系が共に生き延びる希望を描くという、きわめて困難な課題が待ち受けている。
この講義では、倫理学とキリスト教の研究者の視点から、以上のような複合的で越境的な問題にとりくむことにしたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04220077
FLE-HU4205L1
応用倫理特殊講義Ⅶ
福嶋 揚
A1 A2
水曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
1 序論―気候危機の根底に何があるのか 2 資本主義という名の〈宗教〉―マルクス・ウエーバー・ベンヤミン 3 資本主義という名の〈宗教〉―その誕生・生成・危機 4 金と宗教―ヤスパースの「枢軸時代」を手がかりとして 5 金と宗教―「枢軸時代」の研究史と現代的な展開 6 金と宗教―西欧中世 7 金と宗教―宗教改革 8 金と宗教―ピューリタン革命と産業革命  9 金と宗教―グローバル資本主義 10 気候崩壊と西欧キリスト教文明の功罪 11 資本主義の非神話化―犠牲者の視座 12 資本主義の非神話化―債務奴隷の解放 13 資本主義の非神話化―コモンズの再興  14 資本主義の非神話化―脱成長 15 予備日 以上の予定は、多少変更する可能性がある。
授業の方法
講義による。講義中に適宜、質疑応答やディスカッションの時間を設けたい。
成績評価方法
講義への積極的な参加(20%)と、期末レポート(80%)によって評価する。
教科書
特に指定しない。講義中に様々な文献を紹介する。その一部は以下の「参考書」を参照。
参考書
ベンヤミン「宗教としての資本主義」、『ベンヤミン・コレクション7』、ちくま学芸文庫。 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、岩波文庫。 マルクス『資本論』、岩波文庫。 ヤスパース『歴史の起源と目標』、河出書房新社。 トーニー『宗教と資本主義の興隆』、岩波文庫。 グティエレス『神か黄金か』、岩波書店。 ラッツァラート『〈借金人間〉製造工場』、作品社。 グレーバー『負債論』、以文社。 ラトゥーシュ『脱成長』、白水社。 教皇フランシスコ『回勅ラウダート・シ』、カトリック中央協議会。 柄谷行人『憲法の無意識』、岩波新書。 斎藤幸平『大洪水の前に』、堀之内出版。 Duchrow/Hinkelammert, Transcending Greedy Money, palgrave macmillan. T&T Clark Handbook of Christian Theology and Climate Change, T&T Clark.
履修上の注意
特別な予備知識や事前準備は必要ない。