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最終更新日:2024年4月1日
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社会心理学特殊講義III
人間関係と集団と統治の社会心理学
心理学、とりわけ社会心理学は人間関係、集団関係の原理を扱うものである。これまで多くの基礎的な科学的原理を発見、提示してきたが、一方でその社会的、個人的応用範囲は広く、制度設計や政策決定に広く利用されている国も見受けられる。しかし日本では、今だに「心理学=カウンセリング」という拙い理解が一般には普及し、それは他領域の専門家でさえそうである。世の中では、「よい解決法」だと思われながら実際に社会に適用してみたら「うまく機能しない」ことがたくさんある。それは、実際に活用して動くのは「人間」であり「人間の心」であるというシンプルな真実にしばしば配慮が足りないからだ。そうしたことからマーケティングになどに応用されるようになった「行動経済学」は経済学に心理学的発想を入れ込んだものだ。同様に、行政や政治の領域でも心理学的知見は活用可能である。政治は人心と共にあり、人心の把握なしに円滑な行政は成立しない。民主主義社会では「統治」という発想を排するが、あえてここでは「統治」とは心理学的に何か、何を考えればよいのか、どうしたらよいのか考えてみたい。
人の法則を無視しては行政も司法も経営も組織運営も成り立たない。この講義はアカデミックな関心にもかなり応えるものであるが、実社会でリーダーシップを発揮しようとしている者に素養を与えるものである。日本では「心理学は誰でも想像がつく簡単な、あるいはいい加減な学問である」とうい偏見が見られるが、大学時代に最新知見に全く接しなければ、もしかしたら一生、知能の遺伝規定性の割合も遺伝とは親と似ることでないというシンプルな科学的事実も、高齢になるほど遺伝規定性が高くなるという事実も推論がなぜ偏って失敗するかの原理もなぜそもそも人は競争したり自己顕示したりするかという簡単な原理も知らない、気づかないまま夢遊病のように自覚のない人生を生きてしまうだけであろう。知らないことは莫大に多い。この講義では「そんなこと聞いたことがない」という話を中心に、人類、人とはいかなる原理で存立、活動し、人間関係、集団関係、そして日本文化、日本人的行動原理が「なぜそうであるのか」の理由、根本原理まで解き明かすことを試みる。人として生きる限り、心理学は一生の生活すべてに関わり、自分の家族関係、恋愛関係、友人関係、職場での関係すべてにわたって、「知っている場合と知らない場合」では累積的に大きく人生を変えていく。学生時代に社会関係の原理に触れておくことはかなり有用であり、さらにこの講義では、日本での先端的な大学である東京大学で、しばしば卒業後、重要な職務を将来担って行くであろう人々が考えるべきことは何かという点を大きく意識して、それが官界であっても司法でも企業でも経営でも学術でも組織でも医療でも科学・技術でもすべての場合に、何を基本として心得て、知っておくべきかの知的基盤を用意するものである。もちろん学術的に人文社会の者の高度な学習にもなる。
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