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最終更新日:2024年3月15日

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死生学特殊講義IV

共感とケアの哲学
 医療・福祉はもちろん、他の様々な場面で、共感やケアの重要性が盛んに指摘されている。にもかかわらず、それらの内実は十分には吟味されていない。こういった現状を踏まえ、臨床をめぐる倫理における鍵概念である「共感」と「ケア」について、それが指示する事象の豊かさを尊重しつつ、その意味内容を批判的に検討していきたい。
 より具体的には以下のように講義を進める。まず英語圏で1980年代以降に登場してきたケアの倫理(Ethics of Care)において、共感やケア、またそれらの概念と不可分な、感受性や受容性といった概念が、どのようなものとして捉えられてきたのかを検討する。とりわけ、ケアの倫理の代表的な論者であるキャロル・ギリガン、ネル・ノディングズ、エヴァ・キテイの議論を見ていく。その上で昨今盛り上がりを見せている(フェミニストによる)社会的な徳認識論(Virtue Epistemology)の知見を取り入れつつ、共感やケア(また感受性や受容性)の認知的側面に関する考察を、いっそう深く掘り下げていくことになる。その際、徳認識論の中心的な概念である「認識をめぐる責任」(epistemic responsibility)や「認識をめぐる不正義」(epistemic injustice)に関する最新の議論を主に見ていく。そうすることでケアの倫理(また広義の臨床倫理)の新たな展開――認識論的な展開――を試みたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04180044
FLE-HU4202L1
死生学特殊講義IV
早川 正祐
S1 S2
木曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
おおよそ以下のように進める予定である(進度等によって多少の変更はありうる) 1. 行為論におけるケア概念についての批判的考察 2. ギリガンのケアの倫理 3. ノディングズのケアの倫理 4. キテイのケアの倫理 5. 共感の諸相についての考察 6. 共感と認識をめぐる不正義 7. 共感と認識をめぐる責任 8. 臨床における共感と認識をめぐる責任
授業の方法
基本的には講義形式で行うが、必要に応じてディスカッションを行う。
成績評価方法
授業への参加度(簡単なリアクションペーパー等を含む)と期末レポート
教科書
特になし
参考書
・Harry Frankfurt, The Importance of What We Care About (1988), The Reason of Love (2004) ・Carol Gilligan, In a Different Voice (1982)=『もうひとつの声―男女の道徳観のちがいと女性のアイデンティティ』(川島書店) ・Nel Noddings, Caring: A Feminine [Relational] Approach to Ethics & Moral Education (1984)= 『ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から』 ・Eva Feder Kittay, Love’s Labor: Essays on Women, Equality and Dependency (1999)=『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(白澤社) ・Martin L. Hoffman, Empathy and Moral Development: Implications for Caring (2001)=『共感と道徳性の発達心理学―思いやりと正義とのかかわりで』(川島書店) ・Miranda Fricker, Epistemic Injustice: Power and the Ethics of Knowing (2007) ・Jose Medina, The Epistemology of Resistance: Gender and Racial Oppression, and Resistant Imaginations (2013) ・Arthur W. Frank, The Wounded Storyteller: Body, Illness & Ethics (1992)=『傷ついた物語の語り手―身体・病い・倫理』 ・Jodi Halpern, From Detached Concern to Empathy: Humanizing Medical Practice (2001)
履修上の注意
特になし