Nicholas Cook, Music: A Very Short Introduction (Oxford, 1998)を講読する。諸学問への入門書シリーズの一冊であり、一見、概説書のようにみえるが、従来のこの種の概説書の前提であった考え方自体の孕んでいた問題点や偏りを根本から問い直すことで、そこに思いがけない視界がひらかれてくる。刊行されてからもう20年近くになる本であるが、一見音楽の狭い世界の話のようにみえる知識や情報が、文化や社会の大きな問題にさまざまな形でつながっていることをいたるところで考えさせてくれるもので、その存在意義はいまだ失われていない。次に読むべき関連文献なども多数紹介されているので、授業では、本文を逐語的に読むだけでなく、それらも可能な限り取り入れ、西洋音楽研究の現在の状況を知るとともに、芸術についての学問の全体的なあり方を考え直してみる機会にもしたい。