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最終更新日:2024年4月1日

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宗教学宗教史学特殊講義

せめぎあう人と人外―〈負債〉の東アジア環境文化史―
自然環境は、他者に満ちている。人間は、彼らさまざまなノンヒューマン―草木から鳥獣、昆虫や細菌、あるいは日・月・星といった天体、雨や風、雲などの森羅万象、それらを象徴する神霊に至るまで―と交感・交流し(しようとし)、多様な文化を築いてきた。しかしその関係は必ずしも平和的なものに終始するとは限らず、対立や軋轢を抱え、時には相手を殲滅・破壊するような事態に至ることもあった。決して過度の悪意や放縦な欲望のためだけではなく、ただ自らの生命を繋ぐために、人間は自然を圧迫し、消耗させてゆかざるをえなかったのである。結果人間の心性のなかには、自然からの搾取・環境の破壊に対する負債感と、逆にそれを正当化するベクトルが共存するようになっていった。
地球温暖化や資源の枯渇など環境問題が深刻化し、当該地質年代をアンスロポセン(人新世)と呼ぶ提案もなされる今、持続的な社会・経済を構築するために、自然と人間が取り結ぶべき〈公正な〉関係とは何かが問われている。本講義では、私たちの住む東アジアを主なフィールドにしつつ、人類文化に内在する負債感/正当化のベクトルを長大な歴史のなかに捉えなおし、他者としての自然といかに〈共生〉してゆくか(そしてそもそも〈共生〉とはいかなる状態を意味するのか)、その課題と可能性について考えてゆきたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04170562
FLE-PR4E12L1
宗教学宗教史学特殊講義
北條 勝貴
A1 A2
金曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
1. ガイダンス:他者としての〈自然〉 2. 環境論:空間から場所へ、生命圏へ —アンスロポセンに生きる— 3. 歴史と倫理:トランス・スピーシーズ・イマジネーション/ドメスティケーション 4. 動物論1:鳥との交感 —卜占とシャーマニズム— 5. 動物論2:毛皮と変身 —トーテミズムと対称性— 6. 動物論3:送り祭儀と殺生罪業観 —串刺しをめぐって— 7. 草木論1:巨樹より生まれしものの神話 —竹取物語の深層へ— 8. 草木論2:伐採抵抗から草木発心修行成仏論へ —生存の葛藤と本覚論— 9. 景観論1:水稲耕作と生政治の景観構築 —稲作至上主義批判— 10. 景観論2:柴草山をめぐる集合的忘却 —桃太郎昔話から探る農村生活— 11. 災害論1:医書にみる野生の思考 —自然の観察に基づく呪的治病— 12. 災害論2:艱難を受けとめる心的態度 —都市陥没譚にみる相対化のベクトル— 13. まとめ:突き動かすもの、〈負債感〉
授業の方法
講義による。
成績評価方法
毎回提出してもらうリアクションペーパー(40%)、および期末レポート(60%)により、総合的に評価する。レポートの課題は、授業中に指示する。
教科書
とくに定めない。必要な資料は毎回配付する。
参考書
ジェームズ・C・スコット/佐藤仁監訳『ゾミア—脱国家の社会史—』みすず書房、2013年(原著2010年) エドゥアルド・コーン/奥野克巳・近藤宏監訳『森は考える—人間的なるものを超えた人類学—』亜紀書房、2016年(原著2013年) エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ/檜垣立哉・山崎吾郎訳『食人の形而上学—ポスト構造主義的人類学への道—』洛北出版、2015年(原著2014年) 菅原和孝『動物の境界—現象学から展成の自然誌へ—』弘文堂、2017年 野田研一・山本洋平・森田系太郎編『環境人文学』Ⅰ・Ⅱ、勉誠出版、2017年 東京歴史科学研究会編『歴史を学ぶ人々のために—現在をどう生きるか—』岩波書店、2017年
履修上の注意
リアクションペーパーを用い、率直な感想を聞かせてほしい。質問には、下記の回答用ブログなどで、可能な限り対応してゆきたい。