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最終更新日:2024年4月22日
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応用倫理演習Ⅲ
環境倫理文献講読
いわゆる環境倫理と呼ばれる分野における古典を日本語で講読する演習。
応用倫理と呼ばれる分野の中で最も大きな分野として確立しているのが、生命倫理(医療倫理)と環境倫理となる。両分野ともほぼ同じ時期(1960~70年代)に立ちあがって来たのだが、その中で焦点化された「原則」は対照的であった。生命倫理が患者・被験者の自律的意思による同意(インフォームド・コンセント)を重視、人格の尊厳を最高の原則としたのに対し、環境倫理は人間の手の入らない自然の尊厳を標榜し、非人間中心主義を志向した。実は、生命倫理(bioethics)という言葉を作ったファン・ポッターは、両者を統合する分野として生命倫理という語を用いたのだが、その方向は主流にはならなかったのである。
その後、生命倫理の分野では人格の尊厳(人間中心主義)の問題点が指摘され、環境倫理の分野では非人間中心主義の限界が自覚されるようになった。両者を再び統合する必要性が認識されるに至っている。2005年にユネスコにおいて採択された「生命倫理と人権に関する世界宣言」(The Universal Declaration on Bioethics and Human Rights)においては、地球的生命倫理(Global Bioethics)の十五の原則に「未来世代の保護」「環境、生物圏及び生物多様性の保護」を含めている。
この動きを考える上で念頭においておく必要がある要素がある。上記「生命倫理と人権に関する世界宣言」を解説したHenk ten Havw & Bert Gorduijn編のHandbook of Global Bioethics (Springer, 2014)は、宣言に影響を与えた文献として、ポッターとならんで、1993年の万国宗教会議「グローバルな倫理に向かっての宣言」を挙げる。宗教上の理念や思想は、宗教という形をとることなく、世俗の領域に影響を与えているのであり、それは生命倫理や環境倫理の分野でも例外ではない。
本演習の目的は二つある。一つは、初期の段階での環境倫理の文献を読むことで、生命倫理との分岐がどこで生じたのかを確認すること。もう一つは、それらの文献の中に宗教の考え方が目に見えないような形で入っていないかどうか、検討することである。
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