学部後期課程
HOME 学部後期課程 応用倫理演習Ⅲ
過去(2016年度)の授業の情報です
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2024年4月22日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

応用倫理演習Ⅲ

環境倫理文献講読
 いわゆる環境倫理と呼ばれる分野における古典を日本語で講読する演習。
 応用倫理と呼ばれる分野の中で最も大きな分野として確立しているのが、生命倫理(医療倫理)と環境倫理となる。両分野ともほぼ同じ時期(1960~70年代)に立ちあがって来たのだが、その中で焦点化された「原則」は対照的であった。生命倫理が患者・被験者の自律的意思による同意(インフォームド・コンセント)を重視、人格の尊厳を最高の原則としたのに対し、環境倫理は人間の手の入らない自然の尊厳を標榜し、非人間中心主義を志向した。実は、生命倫理(bioethics)という言葉を作ったファン・ポッターは、両者を統合する分野として生命倫理という語を用いたのだが、その方向は主流にはならなかったのである。
 その後、生命倫理の分野では人格の尊厳(人間中心主義)の問題点が指摘され、環境倫理の分野では非人間中心主義の限界が自覚されるようになった。両者を再び統合する必要性が認識されるに至っている。2005年にユネスコにおいて採択された「生命倫理と人権に関する世界宣言」(The Universal Declaration on Bioethics and Human Rights)においては、地球的生命倫理(Global Bioethics)の十五の原則に「未来世代の保護」「環境、生物圏及び生物多様性の保護」を含めている。
 この動きを考える上で念頭においておく必要がある要素がある。上記「生命倫理と人権に関する世界宣言」を解説したHenk ten Havw & Bert Gorduijn編のHandbook of Global Bioethics (Springer, 2014)は、宣言に影響を与えた文献として、ポッターとならんで、1993年の万国宗教会議「グローバルな倫理に向かっての宣言」を挙げる。宗教上の理念や思想は、宗教という形をとることなく、世俗の領域に影響を与えているのであり、それは生命倫理や環境倫理の分野でも例外ではない。
 本演習の目的は二つある。一つは、初期の段階での環境倫理の文献を読むことで、生命倫理との分岐がどこで生じたのかを確認すること。もう一つは、それらの文献の中に宗教の考え方が目に見えないような形で入っていないかどうか、検討することである。
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04166704
応用倫理演習Ⅲ
池澤 優
S1 S2
火曜5限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
 以下の書を読むことを予定している。 リン・ホワイト、青木靖三訳『機械と神―生態学的危機の歴史的根源』、みすず書房、1972。 ロデリック・ナッシュ、松野弘訳『自然の権利』、ミネルヴァ書房、2011。 アラン・ドレングソン、井上有一共編『ディープ・エコロジー―生き方から考える環境の思想』、昭和堂、2001。 ピーター・シンガー、戸田清訳『動物の解放』、人文書院、2011。 トマス・ベリー、メリー・タッカー、浅田仁子訳『パクス・ガイアへの道―地球と人間の新たな物語』、日本教文社、2010。 ファン・ポッター、今堀和友・小泉仰・斎藤信彦訳『バイオエシックス―生存の科学』、ダイヤモンド社、1974。  但し、講読する本は変更することがあり得る。
授業の方法
 講読書の各部分ごとに担当者を決める。担当者は担当部分を翻訳して発表し、必要に応じてコメントを加える。その際、レジュメを作成し、配布することが要請される。他の参加者は、それに基づいて討論を行う。他の参加者は、毎回の講読予定箇所をあらかじめ読んでおくことが望ましい。  一回に担当するのは50頁程度を目安とする。演習一回につき二~三人程度の担当者が発表するものとする。三人発表の場合の一人の発表時間は概ね30分程度。
成績評価方法
発表と出席による。発表の内容が成績に反映することはない。万一、履修者数が多い等の理由で、発表の機会を得られなかった場合は、発表者と同様のレジュメの提出によって、発表をしたものと見なす。
教科書
上記参照。テキストは担当教員が用意する。
履修上の注意
ドタキャンは出席者に迷惑をかけるので、厳に謹まれたい。急病の場合などは、下記の連絡先に連絡すること。