学部後期課程
HOME 学部後期課程 中国語学中国文学特殊講義
過去(2016年度)の授業の情報です
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2024年4月22日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

中国語学中国文学特殊講義

魯迅を中心とする現代日中両国の比較文学史
 魯迅(ルーシュン、ろじん、1881-1936)は1902-09年まで明治末の7年間を日本で留学生として過ごし、夏目漱石や森鴎外らの影響を受けた。帰国後も芥川龍之介、小林多喜二ら同時代の日本文学に深い関心を寄せている。
 魯迅は辛亥革命(1911)から五・四運動(1919)以後に至る中国の変革期に際し、漱石『坊つちゃん』(1906)に共感を抱きつつ、中国国民性批判の小説「阿Q正伝」(1923)を書き上げて、国民国家形成のために自己否定すべき「阿Q」像を確立した。「阿Q」像とは次のように仮に定義できようーー通常の名前を持たず、家族から孤立し、旧来の共同体の人々の劣悪な性格を一身に集めて読者を失笑苦笑させたのち犠牲死して、旧共同体全体の倫理的欠陥を浮き彫りにし、読者を深い省察に導く人物。
 「阿Q」像は日本では太宰治の戦後作品や大江健三郎の初期から晩期の作品、そして1979年ポストモダン社会成立前夜にデビューする村上春樹に影響を与える(例えば『羊をめぐる冒険』の「鼠」や「駄目になった王国」の「Q氏」)など、戦後日本の国民的転換期に、自己否定されるべき各種人物像へと展開している。
 本講義では魯迅を軸として、このような日中両国の現代文学の流れについてお話ししたい。
 10月3日(月)文学部本郷キャンパスで開講。
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
04162401
中国語学中国文学特殊講義
藤井 省三
A1
月曜4限、月曜5限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
文学部
授業計画
1 中国文学とは何か、文学史とは何か 2 1902-09魯迅の日本留学と漱石体験 3 漱石『坊つちゃん』(1906)と魯迅「阿Q正伝」(1922)① 4 漱石『坊つちゃん』(1906)と魯迅「阿Q正伝」(1922)② 5 謎の「狂人日記」(1918):狂人のモデルからシャーロック・ホームズまで 6 中間レポート 7 芥川龍之介「毛利先生」(1919年1月)と魯迅「孔乙己」(1919年3~4月) 8 1922年“盲詩人”エロシェンコの魯迅邸滞在と魯迅「端午の節季」「あひるの喜劇」 9 魯迅「藤野先生」と太宰治『惜別』 10 竹内好の戦中期魯迅論と戦後期太宰治批判 11 張愛玲と室伏クララ 12 1979村上春樹デビューと魯迅の影:『風の歌を聴け』と「中国行きのスロウ・ボート」 13 村上春樹における魯迅「阿Q」像:『1Q84』ほか 14 中国の村上春樹チルドレン:衛慧、安女尼宝貝、田原、韓寒、郭敬明 15 期末レポート(1600~2000字)
授業の方法
 授業は(月)4限5限二コマ連続開講し、各コマは基本的に前半60分間を講師による講義とし、後半30分を受講生からの質問に基づく討論とする。毎回、原則としてパワーポイントを併用する。
成績評価方法
 平常点および中間レポート(約1200字)、期末レポート(約2000字)により成績評価を行う。平常点3、レポート7の割合で評価を行う予定。
教科書
藤井省三『中国語圏文学史』東京大学出版会
参考書
魯迅『故郷/阿Q正伝』藤井省三訳、光文社古典新訳文庫|魯迅『酒楼にて/非攻』藤井省三訳、光文社古典新訳文庫|藤井省三著『魯迅と日本文学』東京大学出版会、藤井省三
履修上の注意
本郷キャンパスでA1ターム(月)4限5限二コマ連続開講開講します。
その他
推奨科目